近視は健康問題を超えた社会問題である--災害などの急激な変化で備えるべきは「見る力」
今年7月、文部科学省が「日本の小中学生の50.3%が近視」と発表したのに続き、9月には全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)でも「世界的な近視人口の増加を食い止める必要性がある」と発表した。 全米科学アカデミーの発表に先駆けて「近視を病気として分類し、子どもが屋外にいる時間を増やすことで近視を抑制する必要がある」と発信しているのが眼科医の窪田良氏だ。 『近視は病気です』(東洋経済新報社)の著者でもある窪田氏と、2024年9月に累計460万ダウンロードを突破し、国内シェアNo.1(2024年10月登山アプリ利用者数調査[App Ape調べ])の登山地図GPSアプリ「YAMAP」の提供をはじめとする登山やアウトドア事業を展開する株式会社ヤマップ代表取締役CEOの春山慶彦氏が、「子どもの近視」と自然体験で培われる身体づくりをテーマに6回シリーズで対談する。 【この記事の他の画像を見る】
第4回では、最近多い自然災害について感じること、また本当に備えるべきことを健康面含めて語り合う。 ■近視は個人の健康問題だけではなく、社会問題である 春山:先生の書籍『近視は病気です』を拝読して、日本社会において近視が進んでいることを重く受け止めなくてはと感じたのは、災害を想定した場合です。 窪田:そうですね、今の日本は自然災害が多いので、医師としても被災者の皆さんの健康が気になります。災害が起きた際に、眼鏡やコンタクトが使用できなくて苦労した人も多かったのではないでしょうか。
春山:自然の中で活動する機会があると、そういう想定シーンを実感しやすいですよね。ちなみに、私たち「ヤマップ」は流域地図を開発しました。その流域地図にハザードマップを表示したり、災害時に役立つ山道具の紹介や取り扱いもしたりしています。 窪田:登山をする近視の人は、どのように備えているのですか? 春山:眼鏡の予備を持ち歩く人は多いですね。ただ災害にいかに備えるかについて、「非常食を備えましょう」とは言われますが、道具がない状態で身の安全をどう担保するかまで話が至らないことが多いと思います。