近視は健康問題を超えた社会問題である--災害などの急激な変化で備えるべきは「見る力」
春山:亡き祖父の教えが理にかなっていたとは驚きました。 ■見ること、見せることで広がる世界観 春山:災害と言えば、私が起業するきっかけとなったのは2011年の3.11(東日本大震災)でした。エネルギーや食料などの重要な問題を「他人任せ」にしすぎてしまった結果があの福島の事故だったと感じました。 これは原発の是非とはまた別の話です。自分たち人間も、そして都市も自然の一部であるという前提で、エネルギーや食をいかに地域で賄うかをもう一度考えないといけない、と。
窪田:3.11では、自然災害を目の前にすると人間の力がいかに無力なのかを思い知らされました。 春山:壮絶な経験を少しでもポジティブなものに変換して、次世代、そのまた次の世代に手渡せたらと思いました。それもあり「ヤマップ」というベンチャービジネスを興し、社会に何かしらのインパクトを届けたいと活動を続けてきました。 窪田:この対談の冒頭で登山家・植村直己さんのことに触れましたが、山を登る人は自然に対しても、人間に対しても、とても謙虚ですよね。そしてテクノロジーに対しても謙虚な姿勢を忘れていない。人間が生み出したテクノロジーが自分たちの手に負えない可能性をはらんでいることをよくご存じだと思います。
春山:前回お話しした伝統工芸品を作るイヌイットの年配女性もそうですが、自然の素晴らしさと恐ろしさを両方知っているからこその謙虚さは、私たちも受け継ぎたいですね。 春山:実は私も幼少期から「見る」ことにとても興味を持っていました。赤ん坊の頃も言語を発し出すのは遅かったのですが、気になるものがあると飽きもせずジーッと見続ける子でした。 窪田:私も「見る」ことに興味があって眼科医となりました。意外なところに共通点がありましたね(笑)。
春山:そして10代の頃、探検家で写真家の星野道夫さんが撮影した写真や著作に出逢い、山や自然にのめり込むようになりました。その延長で、写真家として生きていこうと決め、20代の頃はグラフィック誌の編集の仕事をしました。写真家は人間の「見る力」を広げる職業だと感じています。 そして、写真家にはもう一つ、素晴らしい仕事がある。それは「人間の世界観を広げる」ことです。編集の仕事を続けるうちに、「見ること」を通じて世界観を広げることは、ビジネスを通じても実現できると気づき今に至ります。