近視は健康問題を超えた社会問題である--災害などの急激な変化で備えるべきは「見る力」
窪田:おっしゃるとおりですね。いつでも目が見えることは当たり前と思っている人が多いですね。緊急事態のときは道具が使えなくなる可能性がある、そのときはどうしたらよいか、またどう備えておくかも考えておきたいですね。 春山:緊急時にクリアな視界が確保できないのは怖いですね。 ■近視は社会全体の問題 窪田:ちなみに、近視の研究が始まったきっかけは、欧米の空軍パイロット養成校で起こったとある現象でした。その現象とは、入学時は全員視力に問題がなかったのに、訓練を受け卒業する段階になると毎年一定数近視を発症する生徒が出てくる。これでは、せっかく費用や時間をかけて育成しても実際にパイロットとして飛行できません。
国防や安全保障という観点からも、近視有病率が上がっていることは歓迎すべき現象ではありません。第1回でもお話しした中国では、近視有病者が増えていることによって国の経済面にも悪影響を及ぼしているとし、国策として近視抑制に取り組んでいます。 日本でも近視に関して、個人の健康面への悪影響にとどまらず、社会全体の問題として取り扱ってもらいたいですし、そのために発信をし続けたいですね。 春山:実は私の祖父も、生前私に「目を大事にしろ」と言い続けていた人でした。祖父は戦時中、特攻予備軍に所属していた飛行少年でした。
窪田:そうでしたか。おじい様は目の大切さをよくご存じだったかと思います。 春山:そうですね。私は幼少期にファミコンが流行った世代で、よくゲームをしていましたが、そのことを祖父は否定しませんでした。ただ、「遠くを見なさい」「星を見なさい」とは散々言われました。 窪田:そうなんです、目の健康にとってゲームやテレビ、スマホが一切ダメというわけではないのです。ゲームなどの近見作業と遠く見るという行為、それぞれのバランスをどううまく取るかが大事なのです。食べすぎたら次は食べる量を少し控えるようと思うのと同じことです。