なぜ高級車は「数千万円」もするのか? 製造工程から見る、一般車との決定的な違いとは?
高級車と大衆車の質感差
先日、駐車場で自分の車に戻ったとき、隣の車がかなり接近していることに気づいた。駐車枠からはみ出してはいなかったものの、どうやら隣の車の持ち主は急いでいたようだ。注意しないと、こちらの車を傷つけてしまいそうだった。特に、隣の車は高級車だったので、慎重に動かさなければならなかった。 【画像】「信じられねぇぇぇ!」 主要国の「電動車 最新シェア」をグラフで公開!(12枚) その車のメーカーを確認するために後ろに回ると、ポルシェだった。側面を見ただけで高級車だと感じた理由は、車体が大きかっただけではなく、何か違う印象があったからだ。こちらの車越しに見た限りでは、珍しい形状のセダンではなかった。 その違いは、「たたずまい」にあると思う。特にボディの質感や色合いが、周りの大衆車とは違って見えた。ポルシェの黒は、他の車の黒とは明らかに異なり、照り感や色の深みが感じられた。 これらを踏まえて、高級車と一般車の違いは何かを改めて考えさせられる経験だった。
塗装工程の違いが生む差異
塗装の違いについて、まずは高級車と一般車、軽自動車の膜厚に関するデータを見てみよう。コーティング会社の情報によれば、塗装の厚みには以下の違いがある(2022年1月18日更新、『BRANDS』ホームページ)。 ・塗装にコストをかけている車:膜厚100μ~200μ ・一般的な塗装の車(普通車):膜厚100μ~130μ ・軽自動車:膜厚80μ~100μ この膜厚の違いは、塗装の回数に起因している。一般的な車の場合、コート(塗装)とベイク(乾燥、焼付)の工程は次のとおりである(2019年7月3日付、『ベストカーWeb』)。 ・3コート2ベイク(電着塗装、乾燥、中塗りとベースカラーの塗装、乾燥、クリア層) ・3コート4ベイク(電着塗装、乾燥、中塗り塗装、乾燥、ベースカラーの塗装、クリア層) 一方、トヨタの最高級車「センチュリー」の場合、その塗装工程はさらに複雑で、7コート5ベイクという工程が必要だ。具体的には次のとおりである。 ・7コート5ベイク(電着塗装、焼付、中塗、焼付、ベースカラー(1)、クリア層、焼付、ベースカラー(2)、カラークリア、焼付、トップクリア、焼付) さらに、塗装面を平らにするために、2回の水研とバフ研磨も行われる。このように、塗装にかける時間も大きく異なり、一般車は約11時間程度であるのに対し、センチュリーでは約40時間かかるという明確な差がある。