【福島原発事故11年】「小さな安心のために大きな安全を犠牲に」未知のリスクと向き合えない日本 第二次民間事故調・鈴木一人座長に聞く #知り続ける
安心するために「安全」というフィクションにしがみついた
――こうしたリスクに対する向き合い方、「安全・安心」に対する考え方は日本特有なのでしょうか? 特有な部分はあると思います。特に欧米諸国、ヨーロッパでは「個人としては安心を求めつつ、集団としては安全を追求することが個人の安心につながる」という発想が強い印象があります。 ――「小さな安心のために大きな安全を犠牲にした」結果、福島の原発事故は発生しました。 小さな安全のために大きなリスクをずっと後ろ倒しにしていく。リスクがどんどん積み上がっていって、あまりにも大きくなり過ぎると、何とか解決しなければいけないと“在庫一掃セール”みたいな対応をして問題を解決しにいく。日本ではさまざまな場面で、そういう一発逆転の手法を取らざるを得ないことが多い。でも、一発逆転の手法を取る間もなく起こってしまったのが、福島原発事故だと思うのです。安心をするために、安全であるというフィクションにしがみついた。それが結果として、いろんなリスクをどんどん大きくしていったのだと思います。
■鈴木一人(すずき・かずと)東京大学公共政策大学院教授 2013年から2015年まで国連安保理イラン制裁専門家パネル委員。2020年から東京財団制作研究所研究主幹。アジア・パシフィック・イニシアチブ上席研究員、国際問題研究所客員研究員なども兼任。