【福島原発事故11年】「処理水問題」はなぜこじれたのか? 「民間事故調」報告書より #知り続ける
2011年3月11日。東北地方太平洋沖でマグニチュード(M)9.0という超巨大地震が発生し、東北地方から関東地方にかけての太平洋沿岸を大津波が襲った。大量に押し寄せた海水は、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の原子炉の冷却機能を奪い、福島県沿岸地域の浜通りを中心に景色を一変させ、人々の心に深い傷跡を残した。 【福島原発事故11年】風評被害対策はどこまで有効だったのか? 「民間事故調」報告書より 10年以上が経過した今なお、この未曾有の大事故の影響は、日本社会にさまざまな形で影を落としている。こうした中、民間の立場から独自に福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)を設置し、2012年に調査・検証報告書を刊行したシンクタンク「日本再建イニシアティブ」が昨年、さまざまな角度から「10年後のフクシマ」を検証し、「福島原発事故10年検証委員会 民間事故調最終報告書」を刊行した。 「THE PAGE」は、日本社会の「いま」と「これから」を考える上で、避けては通れない福島第一原発事故から得た課題や教訓を「学ぶ」ために、同報告書の一部を抜粋し、要点をまとめた形で紹介していく。
増え続ける処理水問題解決に立ちはだかる「3つのリスク」
放射線物質汚染とそのコミュニケーションにどう向かい合い、どう取り扱うかという課題は、東京電力福島第一原子力発電所事故すべての課題と教訓の中でも極めて難しいテーマである。それは「被曝リスク」「主観リスク」「経済リスク」という同時に解決することが難しいという放射線災害の3つの課題、トリレンマが存在するからである。 福島第一原発事故の後、残された大きな問題に「汚染水」「処理水」の問題がある。津波の海水、燃料デブリ(溶融した燃料)を冷やすための水、雨水・地下水などが、建屋や原子炉などを含む汚染されたエリアを通ることによって、セシウムやストロンチウム、トリチウムなど様々な含む放射性物質に汚染される。 東京電力は、そうした高濃度汚染水の浄化処理を進めるため、2011年から「キュリオン」「サリー」というセシウム吸着装置を稼働し、また62種類の多核種を除去する装置「ALPS(アルプス)」などを稼働させてきた。汚染水を増やさないためのさまざまな取り組みも行なっている。ALPSでも除去できないトリチウムを環境中に排出する際の濃度の運用目標は1500Bq(ベクレル)/L(リットル)未満とし、2014年には地下水バイパスの設置、2015年にはサブドレン(建屋近くの井戸)水の放出を開始した。また2016年には地下水の流入を防ぐために原子炉建屋の周囲を凍らせる凍土壁も運用が始まった。 とはいえ、徐々に汚染水が増え続けていることには変わりはない。廃炉処理の一環として、事故後、増え続けたこの水をどうするかという問題が「汚染水対策」「汚染水処理」である。