ストレッチが必要なのはこんな人! 願望を叶えるストレッチの効果(専門家が監修)
筋トレ効果を高めたい
筋トレは、筋肉を動かせる範囲(レンジ・オブ・モーション=ROM)を目一杯使った方が有利。 ストレッチでROMを広げておき、最大収縮から最大伸張までROMをフルに使えたら、同じ重さで鍛えても筋力アップや筋肥大を最大化できる可能性がある。 ただし、筋トレ直前にストレッチを行うのは逆効果。強いストレッチを行うと、一時的に筋力がダウン。いつものルーティンがこなせなくなる恐れがある。 「80%1RM(定番の10回×3セットプログラムに最適の負荷)で、最大何回反復できるかを調べた結果、筋トレで使う筋肉を直前に強くストレッチすると、反復できる回数が18%減るという研究があります」 ストレッチしてから時間を置いて筋トレへ移るか、もしくはストレッチは筋トレをしないオフ日に。 ストレッチには、筋トレによるカラダ作りを支援するこんな効用も。 筋トレで筋肉を大きくしても、トレーニングを休止する「ディストレーニング」中に筋肉は徐々に減る。 だが、ディストレーニング中にストレッチを行うと、筋肉の萎縮にブレーキがかけられるという嬉しい報告がある。怪我などで筋トレを休まなければならないタイミングで、できる範囲でストレッチを実施すれば、筋肉の減少は最小限に抑えられそう。
いつも全力を出したい
スポーツ時の怪我(外傷)は避けたいもの。怪我を防ぐために、ストレッチに励む人も多いだろう。 でも、ガッカリさせるようで申し訳ないが、ストレッチだけでは怪我は防げない。 「怪我の多くは、人やモノとの予期せぬ激しい接触、着地時などの不自然な関節の捩れなどにより生じます。いくら入念にストレッチしたとしても、こうした突発的な接触や捩れは避けられませんから、ストレッチさえ行えばすべての怪我が防げるとは言い切れないのです」 ただ怪我の中でも肉離れの予防には、ストレッチが効く。 肉離れとは、筋肉を構成している筋線維の一部が、引き伸ばそうとする力に耐えながら収縮する「エキセントリック収縮」のときなどに、部分的に損傷するもの。 とくに発生しやすいのは、長らく運動から離れていた人が、職場や子供の学校のスポーツイベントなどで久しぶりにダッシュしたり、全力を出そうとしたりするとき。肉離れが多発するのは、太腿後ろ側のハムストリングス、ふくらはぎの下腿三頭筋といった下半身の筋肉だ。 「普段からこれらの筋肉の柔軟性をストレッチで高めておけば、エキセントリック収縮時のダメージがそれだけ少なくなり、思わぬ肉離れを起こしにくくなると考えられます」
取材・文/井上健二(初出『Tarzan』No.882・2024年6月20日発売)