第1志望に「3分の2が不合格」中学受験の現実 入学して“今はここで良かった” #こどもをまもる
中学受験で落ちても「小さな失敗」親の心構えカギ
学校への愛着が増すと、生徒たちが自主的に学校の魅力を発信し始めることもある。東京・市ケ谷駅から徒歩6~7分、外堀の近くにある千代田区の女子校、三輪田学園中学校・高等学校だ。 「正確な調査はしていないのですが、第1志望ではない生徒は3分の2ぐらいという印象です」と湯原弘子教頭は言う。
三輪田学園が大事にしているのが、中1、中2のクラスでの信頼できる人間関係づくりだ。 「クラス会議」という活動では、話す生徒がぬいぐるみなどを持って自己紹介をしたり、議題があるときには自分の意見を言ったりする。ぬいぐるみを持つ意味は、話し手が誰かを周囲に伝えるためだ。話を聞く生徒は、相手の話をさえぎらず、否定せず、良さをまず認める。すると、話す生徒は自分が受け入れられていることを実感できる。同じ小学校や塾出身の生徒はあえて別のクラスに分け、多くの友達と交流できる環境を整える。 担任と保健教員、スクールカウンセラーが連携し、一人ひとりの生徒に目を配る。友人との距離感やどんな言葉を使ったら友達が傷つくのかを学ぶ保健の授業もある。授業後に書く友人へのメッセージには、学校生活で助けられた感謝の言葉が並ぶ。 <昼休みに独りぼっちでなんとなくさびしかったとき、話しかけてくれてありがとう> <当てられた問題の答えが分からず絶体絶命のとき、小声で優しく教えてくれてありがとう>
新たな友達ができると、自然と愛校心も生まれ、育ってくる。 コロナ禍の2021年に「受験をする小学生たちに三輪田の魅力を伝えたい」と、ダンス部の生徒たちが、学校紹介動画をつくった。さらに、広報の呼び掛けで「三輪田ガールズプロジェクト」を立ち上げたところ、約1100人の生徒のうち500人以上もの生徒が手を挙げた。いま、高校2年生が運営の中心になり、学校説明会のときに受験生に校舎を案内したり、SNSで発信したりしている。夏休みには生徒主催の説明会も開催する。 湯原教頭はこう話す。「受験生の皆さんには、事前に学校をよく見て『この学校なら通いたい』と思う学校を受けてほしい」。入試で初めて学校に来たという生徒も少数いるが、こうした生徒の中には、学校生活になじめないケースもある。保護者のスタンスも大事だ。「子どもたちは親御さんに認めてもらいたいと思っています。合格した学校で、ここで楽しもう、がんばろうと背中を押してあげてください」 高校受験や大学受験とは異なり、中学受験は保護者の関わる度合いが大きい。それだけに受験結果に一喜一憂し、動揺する場面もある。ただどの学校に進んでも、保護者が子どもを認め、一緒に楽しむことができれば、親子にとって中学受験は、いっそう価値のあるものになる。 約40年間、中学受験に挑む子どもたちを見てきた森上さんは、不合格で落胆したとしても「保護者は演じ抜いてほしい」と呼びかける。 「中学受験の失敗なんて本当に小さな失敗です。落ちたら『おぉ、良かったね』と言ってあげるぐらいの心構えでいてほしい。思春期の中1、中2は友達からしか得られないことがある。進学先の学校でいい友達をつくることができれば、中学受験は大成功です」 国分瑠衣子(こくぶん・るいこ) ジャーナリスト。北海道新聞、繊維業界紙記者を経てフリーランスに。経済、法律、教育の分野を中心に取材活動を行う。今取り組んでいるテーマはカスタマーハラスメント問題。趣味はおいしい日本酒を探すこと ------------ 「子どもをめぐる課題(#こどもをまもる)」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。子どもの安全や、子どもを育てる環境の諸問題のために、私たちができることは何か。対策や解説などの情報を発信しています。