第1志望に「3分の2が不合格」中学受験の現実 入学して“今はここで良かった” #こどもをまもる
聖学院の早川太脩広報部長は「分析では中1、中2の生徒のうち半数ほどが、第1志望の生徒ではありません」と話す。入学した生徒たちに多くの同級生と交流してほしいという考えから、同校は自己表現やコミュニケーションツールの一つとして、レゴブロックを使っている。いろいろな形やパーツがあるレゴは、組み立てやすく自分の感情を表現しやすいという。 入学直後は、自分の気持ちを言葉で表現することが苦手な生徒も少なくない。そこでレゴを活用する。「あなたにとって幸せとは何か」というテーマで作文を書く前には、レゴで自分が幸せを感じるときを表現する。好きな電車、家庭での食事の様子など生徒が作るものはさまざまだ。早川さんは「形で表現すると、本人が説明しやすいし、周りも質問しやすい」と説明する。レゴを通して友人と交流を深めることができる。
学校行事の運営メンバーになったことがきっかけで、愛校心が芽生えた生徒もいる。 早川さんが印象に残っている生徒がいる。聖学院が第3か第4志望だったその生徒は、最初は学校生活を楽しんでいる様子はなく、運動会などの行事も参加はするが、どこか一歩引いているように見えた。だが、当時の担任教員が「運営をやってみる?」と声をかけたことがきっかけで、中2のときに学園祭の運営をした。 大きな変化が見られたのが、中3で行く新潟県糸魚川市での3泊4日の体験学習だった。その年はお世話になっている糸魚川市の観光パンフレットを作ることがテーマだった。その生徒はプロジェクトのメンバーになり、印刷のための寄付をクラウドファンディングで募り、映像撮影などを中心になって担った。早川さんは「誰かのために行動することが楽しいと思えるようになり、自信をつけ、学校が好きになっていることが分かりました」と言う。今、大学生になったその生徒は、OBとしてよく学校を訪れ、高校生の進路選択をサポートしている。 「別の高校に進学する生徒も少数ですがいます。でも多くの生徒が6年間のうちに、それぞれのタイミングで気持ちを切り替え、前向きになります」(早川さん)