第166回直木賞受賞会見(全文)今村翔吾さん「やっとここまで来たか」
今後どういう作家になりたいか
中日新聞:中日新聞の谷口です。受賞おめでとうございます。 今村:はい、ありがとうございます。 中日新聞:今、直木賞が夢だったということを語っていただきましたけれども、その夢をかなえた今、今村さんが作家として次に目指す夢だったり、あとはさっき浅田先生も講評でおっしゃったんですが、直木賞を取られたら落ち着いて物を書いていけるんじゃないかということでしたが、例えば今後書きたいものだったり、どういう作家になりたいか、お聞かせいただけますか。 今村:そうですね、落ち着いて書きたいですね。来月から5月までで5冊、僕、本出るんですか。落ち着いて書きたいなって。今まではもう本当にがむしゃらに期待に応えて走ってきたんで、1回時間をたっぷり掛けて心ゆくまで1つに臨んでみたいなって思いもあるんですけれど、一方で、なんかもう慣れちゃった部分もあって、この生活に。直木賞は本当に僕にとっては夢ですし、素晴らしい賞なんですけど、あしたになったらもう過去になるんで、またより良い作品を、そして作品はもちろんのこと、自分の生き方として、新しい夢というか、次の目標みたいなものを常に持っていきたいなと思っております。どうでしょうか。
全国の本屋さんへのメッセージがあれば
中日新聞:ありがとうございます。あとは直木賞を取られたら全国の書店を行脚して、ご自身も書店されているということもありまして、応援したいということをおっしゃっておりましたが、今ちょっとコロナ禍で書店、もちろん移動もはばかられたりだとか、あるいはそれで本屋さんも危ない状況だとは思うんですけれども、あらためて全国の本屋さんへのメッセージだったり、いつかしたいこととかありましたら。 今村:めっちゃええパスくれるね。 中日新聞:はい。 今村:言うてました。できれば、本当はこういう状況じゃなければ、この足で47都道府県回るまで帰らないっていうことをやろうと思ってました。もう車も買ってました。ただ、今のこの昨今の状況を鑑みて、やっぱりちょっと今じゃないなと。ただ、必ず、これはもう僕の完全な持ち出しで、47都道府県というか、書店さんに、僕はやっぱり今、ご存じの方もおられるかもしれないですけど書店も経営してて、きれい事かもしれんけど、なんかできることはないんかっていうことを思って、できれば車で47都道府県、一筆書きで一気に回って、3カ月ぐらい掛かる計算らしいんですけど、書店さんたちを応援していくようなことを計画してます。 だからもう少しみんなでこういう状況、気を付けて乗り越えていって、何か楽しいこと、明るいことができるようになったらいいですねと、僕は必ずこの約束は守るので、皆さん、ぜひ、そのときはぼくから募集しますんで、今村翔吾来てくれっていう方は、あとは書店とか学校とか、今村翔吾、翔吾来てくれでいいんで、ぜひ呼んでください。できる限り伺いたいと思います。もちろんボランティアで行かせてもらいたいと思います。 司会:はい、ありがとうございました。 中日新聞:あと、最後に1ついいですか。 司会:じゃあ、はい。 中日新聞:すいません、長々と。今村さんの本であらためて時代小説を手に取る若い読者というのも、「ぼろ鳶組」はじめ、たくさんおられたと思うんですが、あらためて読書離れ等が叫ばれる中で今を生きる人たちに向けて、どういう作家になりたいとか、どういうものを書きたいっていう決意みたいなものがありましたら。 今村:すごいあえてチープな言葉で言いますと、面白いものを書きたいです。面白い作品が、面白い小説の力を僕は信じてますので、もっと、あえてシンプルに、面白い小説を届けたいなって、そこに僕は光があるんじゃないかなと思ってます。 中日新聞:ありがとうございました。