快挙の連続「はやぶさ2」 想定外と葛藤乗り越え カプセルが地球帰還
小型探査機で「夜のリュウグウ」の観測に成功
はやぶさ2プロジェクトチームにとって、予想外だったのはリュウグウの形状だけではありませんでした。リュウグウの表面を観察してみると、たくさんの岩塊に覆われていて、はやぶさ2がタッチダウン(着地)できそうな場所が見あたらなかったのです。プロジェクトチームが考えていた着地案は、リュウグウ表面に定めた100メートル四方の場所のどこかに着地するというものでした。しかし、リュウグウの表面は岩塊が多すぎて、これほど広い平地はどこにもありません。 当初、はやぶさ2はリュウグウの表面で最大3回のタッチダウンを行う予定で、最初のタッチダウンは到着から2か月後の10月下旬に実施されるはずでした。タッチダウンは、はやぶさ2のミッションの中で最も危険を伴うものです。プロジェクトチームはタッチダウンの時期を翌2019年に入ってからと大幅に遅らせ、その間にリュウグウ表面の状況をつぶさに観測し、安全に着地させる方法を探る決断をしました。はやぶさ2の着地を拒むかのような岩だらけのリュウグウに対して、プロジェクトマネージャの津田雄一さんは「リュウグウが牙をむいた」と口にしました。
ただしこの間、プロジェクトチームは何もできなかったわけではありません。2018年9月21日には、小型ローバー「ミネルバII-1」を投下し、リュウグウに着陸させることに成功しました。ミネルバII-1は、初代「はやぶさ」が小惑星イトカワに着陸させようとした小型ローバー「ミネルバ」の名前を引き継いだ2台のローバーの総称です。ミネルバはイトカワに着陸することはできず、宇宙空間をさまよう結果になってしまったのですが、今回のミネルバII-1は2台ともしっかりとリュウグウに着地することができ、初代ミネルバのリベンジを果たしました。 さらに10月3日には、ドイツ航空宇宙センター(DLR)とフランス国立宇宙研究センター(CNES)が共同開発した小型探査機「マスコット」の着陸も成功させました。はやぶさ2は仕様上、リュウグウの昼間の様子しか観測できないのですが、マスコットは搭載した電池によって17時間ほど稼働し、リュウグウの夜の状態を初めて観測することに成功し、貴重な情報を私たちにもたらしました。