快挙の連続「はやぶさ2」 想定外と葛藤乗り越え カプセルが地球帰還
人工クレーター生成で地下物質を採取できた?快挙
2019年に入り、はやぶさ2はついにタッチダウンに挑みます。はやぶさ2がタッチダウンを行うのはリュウグウ赤道付近の領域。100メートル四方の広くて安全な場所はどこにもなかったために、プロジェクトチームが定めた最終的なタッチダウンの目標は直径6メートルほどの小さな場所です。難易度が大幅に上がってしまいましたが、事前に投下したターゲットマーカーを基準にして、はやぶさ2を目標地点まで精密に誘導する「ピンポイントタッチダウン」という手法を使用することで、見事タッチダウンを成功させました。
はやぶさ2はタッチダウンと同時に、リュウグウの岩石を細かく砕くための弾丸をしっかりと発射させることができました。初代はやぶさはイトカワの表面にタッチダウンはできたものの、弾丸の発射には失敗したため、イトカワのサンプルをそれほど多く持ち帰れなかったという苦い経験があります。はやぶさ2は、まさにタッチダウンの完全成功ともいえる事例を成し遂げたのです。 はやぶさ2に搭載された小型モニタカメラ(CAM-H)は、着地した瞬間にリュウグウの岩石が四方八方に飛び散る様子をしっかりと捉えました。それはまるで、はやぶさ2のタッチダウン成功を祝福する紙吹雪が吹き上がるようでした。
4月5日。はやぶさ2は、小惑星探査の歴史に新たなページを加える快挙を達成しました。小型衝突装置(SCI)を使用して、リュウグウの表面に人工クレーターをつくることに成功したのです。SCIによる人工クレーターの生成は、はやぶさ2で初めて計画された独自のものです。天体に人工物を衝突させる探査は、彗星などでは行われていましたが、小惑星では初めてです。しかも、できた人工クレーターをしっかりと観測することは、世界初のことでした。 リュウグウに人工クレーターをつくったことで、はやぶさ2はリュウグウ地下の物質も手にするチャンスを得ました。このまますぐに2回目のタッチダウンを行うかと思いきや、そう簡単な話ではありませんでした。タッチダウンを1回成功させているが故のジレンマを抱えていたのです。 タッチダウンは、貴重なサンプルを得るための唯一の方法であると同時に、はやぶさ2が壊れてしまう危険も伴っています。どんなに注意深く行っても、タッチダウン時に事故が起こらないとは限りません。そのリスクを負ってまで2回目のタッチダウンを実施する必要があるのか、という意見も出てきました。 リュウグウに人工クレーターをつくったことで、その周辺にタッチダウンを実施すれば、掘り返されたリュウグウ地下内部の物質という、1回目では手に入らなかったさらに貴重なサンプルを手にできる可能性が高くなります。プロジェクトチーム全体で、その科学的な価値と事故を起こすかもしれないリスクについて時間をかけて検討した結果、2回目のタッチダウンを実行することを決定しました。事前にさまざまなシミュレーションを繰り返し、安全性を保ってタッチダウンできると判断したのです。 2回目のタッチダウンは7月11日に実施されました。目標地点は、人工クレーターの中心部分から20メートルほど離れた場所でした。このときも、事前に投下したターゲットマーカーを使って精密に誘導するピンポイントタッチダウンでの着地です。はやぶさ2は順調に高度を下げ、目標地点から誤差60センチという非常に高い精度でタッチダウンすることに成功しました。