名医・小林弘幸 60歳を過ぎたらどうしても後ろを振り返りがちだが…その先を前向きに生きていくヒントは「片づけ」にあった
◆過去の自分と現在の自分を分けて生きる もう一つ、我々がとらわれがちなのが、過去の栄光です。60歳を過ぎると、後ろをふり返ることが増えてきます。でもあまりそこに時間を費やしていると、前に進めなくなってしまいます。 ただでさえ、60歳を過ぎると一歩前進、二歩後退の状態になります。どちらかというと右肩下がりになってきて、発展も進展もない状態になります。 60歳までにいた環境で感じていたストレスが、病気になって現れることもありますし、気を付けていても、認知症になる可能性も否定できません。そういったことが自分の身に起きたとしても、受け容(い)れるしかありません。 暗いことばかり並べてしまいましたが、一番お伝えしたいことは、60歳を過ぎると、何があってもおかしくない、でも人生はそこから先もまだまだ続いていく、ということです。 この先をどうしたら前向きに生きていけるのか。その答えは、私は「片づけ」だと考えています。心に箱を持つことです。過去のことは切り離して、「今、ここ」からスタートする新しい箱を、心の中につくりあげていくイメージです。
◆古い箱にはもう戻れない 人間、常によい状態をキープするのは難しいことです。若いときは、たとえショックな出来事があっても、仕事がどんなにつらくても、体力もあって友達もいて楽しいこともたくさんあるので、意外に簡単に乗り切れてしまいます。 でも60歳を過ぎると、病気や死が近づいてくる分、不安や孤独を感じることが増えます。にも関わらず、ショックなできごとを払拭できるだけの体力もパワーもなくなってきます。だからこそ、何が起きても、それにとらわれるのをやめられる「考え方の習慣」が必要になってきます。 なぜこんなことを書くかというと、日本には皆が宗教を持つという文化がないからです。 西洋ならば、「すべては神が決められたこと、神の御心(みこころ)のままに」と考えることで、すべてを受け容れ、楽な気持ちになれるのでしょうけれど、我々はそう単純にはいきません。 ですから、「新しい自分の世界を今日からつくるんだ」という気持ちで、自ら箱をつくって、新しい箱に入っていくイメージを持つことです。古い箱にはもう戻れない。そう考えれば、前を向いて、いつでも新たなスタートを切れるのではないでしょうか。 ※本稿は、『老いが逃げていく10の習慣 自律神経さえ整えばすべてうまくいく』(講談社)の一部を再編集したものです。
小林弘幸
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