7浪→40歳で医学生→53歳で医師免許の専業主婦…一発逆転人生の裏にある同情を禁じ得ない"生い立ち"
■家業の薬局を辞め32歳で受験勉強を開始 現在、愛知県内の病院で、総合内科医として働いているのですが、私のキャリアは一風変わっています。32歳で医師を志して、家業の薬局の仕事を辞め、医学部の受験勉強を始めました。 【図表】前島貴子さんの医師免許取得までの軌跡 「その年齢で、なぜ医師になろうと思ったのですか?」とよく質問されるのですが、私なりの理由があります。 私が子どもの時、両親は不和で、離婚してしまいました。そうした家庭環境の影響か、私は社交的な一方で、精神的に不安定な面があり、学校生活や社会人になってからの人間関係でも、つまずくことが多かったのです。そこで、同じような悩みを抱える人の役に立ちたいと思って東京の会社を辞め、臨床心理士を目指して、26歳で地元の島根大学にAO入試で入学しました。 大きな転機になったのは私が32歳の時、父の自死でした。「臨床心理士の勉強をしたのに、父を助けられなかった」といった、自責の念が強くなりました。それに大学在学中、アルコール依存症や拒食症などの患者さんに接するうち、「心身両面の医療をもっと深く知りたい」と、感じるようになりました。そうした経験が、「医師になりたい」という、私の強い動機づけになったのです。 とはいえ、家庭問題で勉強が手につかなかった私は、典型的な「劣等生」だったので、予想をはるかに超える苦労が待っていました。数学は分数から学び直しました。医学部入試は7回連続で不合格。8回目の入試で、ようやく藤田保健衛生大学(現在の藤田医科大学)医学部に合格でき、まさに七転び八起きの受験生活でした。しかし、医師への道程は険しく、医学部の勉強についていくのは大変でした。講義や実習に追われ、毎月のようにテストがあるので、その対策にも忙殺されました。医師国家試験にも2回失敗し、「3度目の正直」で、晴れて医師免許を取得できました。もっとも、医師になることを「諦めよう」とは、一度も思いませんでした。 一方で、34歳で結婚し、3人の子どもにも恵まれました。つまり、主婦として家事、育児をしながら、医学部の受験勉強、医師国家試験の勉強を続けていたわけです。そのことを聞いて、驚く人も少なくありません。世の中には、仕事と家庭の両立に悩む女性も多いようです。ここでは主婦業の傍ら、どうやって医師免許を取得したのか、私の勉強法をご紹介しましょう。