「もう一度、よろしくお願いします」妊娠を機に結婚、2人目も生まれた後に…“同じ人と再婚した”夫婦の複雑な事情
厚労省の調査によれば、今や3組に1組の夫婦が離婚している。離婚は珍しいものではなくなり、何度も離婚と再婚を繰り返す人も散見される。ただ、同じ相手と再婚する人はかなり少数派だ。今回は、そんな離婚した相手と再婚した人に、そのいきさつを聞いてみた。(全3回の1回目/ #2 に続く) 【画像】同じ人と再婚した55歳女性の姿 ◆ ◆ ◆
妊娠を機に結婚、2人目も生まれたが…
伊藤麻理さん(55歳・仮名)は、今年春に、ナオヤさん(50歳・仮名)と再婚した。2人が出会ったのは、麻理さんが29歳の頃。知人の飲み会で一緒になったことから、意気投合したのだという。 「彼とは、年は違うけど誕生日が一緒だったこともあって盛り上がったんです。あと、私は坂本龍一が好きなんですが、彼はちょっと顔が似てたんですよ。それで、いいなって思ったんです」 ナオヤさんも同じ気持ちだったようで、2人は自然にデートを重ね、付き合うことに。ナオヤさんが麻理さんの家で過ごすという半同棲生活を半年ほど経て、本格的に同棲を開始した。 「私はずっと子どもが欲しくて、同棲して5年ほどが経ったときにやっと妊娠したんです。それで結婚をしました。彼もすごく喜んでくれて、妊娠した時は2人で抱き合ったのを覚えています」 無事、男の子を出産すると2人目の男の子も年子で出産。このとき、麻理さんは36歳、ナオヤさんは31歳である。子育てで毎日がドタバタだが、これから幸せな時間を家族で過ごしていくはずだった。 しかし、2人目が生まれてからナオヤさんのDVが始まる。 「年子で育児が大変で、私が育児ノイローゼになっちゃったんです。それから、ささいなことで口論をするようになりました。彼のほうも、仕事のストレスがあったんですかね。口論になる度に、私を殴ったり蹴ったりしました。彼はお酒が入ったときだけではなく、シラフのときでも暴力を振るうんです。そのうち、帰ってくるなりパンチ、みたいな感じに」
DVから逃れ母子寮へ
思い返せば、DVの兆候は、子どもが生まれる前からあった。口論になるとナオヤさんは、モノに当たっていたのだ。自宅の壁には、ナオヤさんが殴ってあけた穴がいくつもあったそうだ。 ただ、驚くべきことに麻理さんは、友人に指摘されるまで、このことをDVだと認識していなかったという。 「暴力を振るったあとは必ず謝るし、『なんでも好きなの買いな』って1万円をくれたりしたんです。その繰り返しでした。子どもには決して手を上げなかったので、私が我慢してればいいやって思っていたんです……」 そんな麻理さんは、友人から「それってDVだから! 異常だよ!」と言われて目が覚めた。このままでは自分や子どもの身がもたないと察した麻理さんは、ナオヤさんが留守の間に幼い我が子たちを連れて、隣県の実家へ逃げた。 「すぐに夫は追いかけてきて、実家で大暴れでした。『出てこい! この野郎!』『ふざけんな、ババア(麻理さんの母)は引っ込んでろ!』などと暴れたので、警察を呼んで対応してもらいました。次の日、私は福祉事務所に呼ばれて、補助金の手続きなどをして、その後はシェルターに入れてもらいました。3カ月いたんですけど家賃が払えなくなり、母子寮(母子生活支援施設)に移りました。そこは家賃がかからなかったので、子どもを保育園に預けて仕事をする毎日でしたね。そのときはまだ離婚してなかったんです」