「いつも片方だけ鼻づまり」 これ病気? 手術が必要なケースとは? 【医師に聞く】
鼻づまりに悩まされている人のなかで、いつも「片方だけが詰まっている」という人はいませんか? 特定の側だけ詰まっているという場合には、風邪や鼻炎とは異なる原因が考えられます。目黒本町耳鼻咽喉科の小松﨑先生に詳しく教えてもらいました。 【イラスト解説】「副鼻腔がん」になると現れる初期症状・原因
人体には、片方の鼻だけが詰まる仕組みが備わっている
編集部: 片方の鼻だけ詰まることがあるのは、なぜですか? 小松﨑先生: 鼻づまりはとても一般的な症状で、風邪をひいたり、花粉が飛んだりする時期に鼻が詰まることは珍しくありません。 しかし、そのようなときには大抵の場合、両鼻同時に詰まったり、片側ずつ交互に詰まったりするものです。もし、特定のどちらかだけがいつも詰まっているなら、ほかの原因が考えられます。 編集部: 片側ずつ、交互に詰まることもあるのですか? 小松﨑先生: はい、もともと人間の鼻にはネーザルサイクルという仕組みが備わっています。これは、2~3時間ごとに左右の鼻の詰まりが変化するというもの。 つまり健康な人であっても、「さっきまで右が詰まっていたのに、しばらくしたら左の方が詰まってしまった」と感じるのです。 編集部: なぜ、そのような仕組みが備わっているのですか? 小松﨑先生: 鼻の粘膜は、肥厚と収縮を繰り返しながら呼吸を行い、空気を出し入れしています。しかし、鼻の穴は外気にさらされ続けると痛んでしまいます。 そのため片側をわざと腫れさせて通りを悪くし、一時的に休ませることで呼吸が継続できるようになっているのです。機序はまだ詳しくわかっていませんが、おそらく自律神経が関与しているのではないかと考えられています。 編集部: では、片方だけ鼻が詰まるというのは、異常ではないのですね。 小松﨑先生: 2~3時間の周期で詰まっている側が入れ替わるという症状は、異常ではありません。しかし、いつも特定の側だけが詰まっているという場合には、なんらかの原因が考えられます。
鼻中隔弯曲症などが原因であることも
編集部: 特定の側だけがいつも詰まっている感じがするときには、どのような疾患が考えられるのですか? 小松﨑先生: 多いのは、鼻中隔弯曲症です。鼻中隔とは、左右の鼻の穴を分ける壁のような部分(軟骨)のこと。鼻中隔弯曲症とはこの鼻中隔が曲がっていて、鼻づまりや嗅覚障害などを引き起こす疾患です。 編集部: なぜ、そのようなことが起きるのですか? 小松﨑先生: もともと鼻中隔が正確に真っ直ぐという人はほとんどいません。鼻中隔は思春期から大きく成長し始め、その過程で誰しもがある程度は曲がるものです。 しかし、転んでぶつけたり、スポーツなどで怪我をしたり、事故にあったりしたことが原因で、この鼻中隔の曲がりがひどくなると、鼻づまりなどの症状を引き起こしてしまいます。なかには特に原因がなく、自然発生的に鼻中隔が弯曲してしまうこともあります。 編集部: 自然発生的に鼻が曲がってしまうこともあるのですね。 小松﨑先生: はい。本来なら真っ直ぐ伸びるはずだった軟骨の部分が回りの骨よりも早く多く成長することで、行き場を失った軟骨が曲がって発育してしまい、鼻のなかに盛り上がりができたり、尖った部分ができたりします。 このように、鼻中隔が弯曲すること自体は病気ではありません。そのため、鼻中隔が弯曲しているからといって、必ずしも治療が必要というわけではありません。 編集部: どのようなときに治療が必要になるのですか? 小松﨑先生: 曲がりが過度になると、狭まった鼻の穴側で鼻づまりが生じたり、粘膜が刺激されて鼻血や炎症が起こりやすくなったりします。 弯曲している側と外側の下鼻甲介の粘膜が当たり、頭痛が起きることもあります。そのような理由から日常生活に支障が生じている場合には、手術が必要になります。