サヘル・ローズ、「自分を愛していい」「幸せになっていい」。自分を愛せず苦しんできた私が今、伝えたいこと
今でも解決策が見つからない。世界中に助けられない子どもがたくさんいる
――今回の本の中では、サヘルさんが支援する世界の貧困地域の子どもたちのことにも触れています。 サヘル この本を書いたもう1つの理由は、旅先や支援先の子どもたちの「私たちを忘れないでいてくれてありがとう」という言葉に、「どうせいつか自分たちは忘れさられるでしょ」というニュアンスを感じたことです。 インタビューなどで彼らのことを伝えたつもりでいても、それは彼らの生活のほんのかけらにすぎません。だからこそ、実際に彼ら、彼女らに会って感じたこと、受け取ったことを私がしっかり残さなければいけないと思うようになりました。 これまでもさまざまな支援をしてきましたが、明確な解決策は得られてはいないし、今でも助けられない子どもが山ほどいるという葛藤も抱えています。 このように、これまで記録してこなかった、できなかった出来事や思いを、改めてしっかり記録したいと思って書いたのが、『これから大人になるアナタへ伝えたい10のこと』です。そして、この本は私の出発点にもなりました。 ――この本は、ある意味、サヘルさんの新たな自伝とも感じられました。 サヘル 確かに新たな私の自伝になるかもしれません。だからどんなに大変でも、すべてをゼロから見直し、自分の記憶、思いを整理しようと思いました。ある意味、この本は、サヘル・ローズのインナーチャイルドが書いた本というほうが正しいかもしれません。 また、それをしないと母親ともこのまま一生向き合えないと思いました。私と母は血のつながりがありませんから、これまで実にたくさんの葛藤がありました。伝えないという方法もあるでしょうが、私の感情を明らかにすることで、この本を読んだ人が自分の親との葛藤やこれまで言えなかった負の感情を外に出せるようになればいいなと思っています。そのプロセスがとても大事なんですね。
自分自身にちゃんと向き合えているか、愛せているかを振り返る
――自分にも、親にも、子どもにも「向き合う」のはとてもしんどい作業ではないでしょうか。 サヘル 自分自身と向き合えない人は、他者とも向き合えません。だからと言って、無理に向き合ったり、頑張って変わろうとしたりする必要ははないということも伝えたかったんです。 私の経験を読んで、「こんなことに力む必要はなかった」「頑張る必要はなかった」ということにも気づいてくれればいいなって思います。 また、私自身が「若いうちにやっておけばよかった」「もっと早く気づいていればよかった」と思うこともたくさんあります。でもそれって、私たちの世代だけでなく、親世代にも同じように自分の本当の気持ちを抑えて我慢してきた人がいるのではないでしょうか。 ――「たまひよ」を読んでいるママ、パパに、この本でいちばん伝えたいことはなんですか? サヘル 元々は親も子どもも赤ちゃんだったわけですから、子どもが0歳なら親も0歳、子どもを育てながら、親も子も、1歳、2歳…と、1つずつ歳を重ねていくものではないでしょうか。 だから、いったん親とか妻とかという役割を全部忘れて、あなたが自分自身にちゃんと向き合えているか、愛せているかを振り返ることが何より大切なのだと思います。私自身は自分を愛することができず苦しんできたので、この本を通じて、「自分を愛していい」「幸せになっていい」ということを伝えられたらいいなと思っています。 お話・写真提供/サヘル・ローズさん 協力/童心社 取材・文/米谷美恵、たまひよONLINE編集部 今回の著書は「ここまで話してしまっていいの?」というくらい、ある意味、生々しく、残酷ともいえるサヘル・ローズさんの経験や思いがつづられています。「そうしなければ先に進めなかった」と言いますが、同時に彼女と同じような経験をした人に対する「1人じゃない」というメッセージでもあります。彼女の思いが1人でも多くの人に届きますように。 後編では、サヘルさんが、親として子どもたちに伝えてほしいこと、そして1人の人間として自分を受け入れることの大切さを話してくれました。 「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
【関連記事】
- ▶続きを読む【後編】【サヘル・ローズ】子育ては不安と葛藤の連続。悩んだときに吐き出せる場所を作ってほしい
- ▶サヘル・ローズ「戦争、病気、震災。ある日突然、家族が引き離されてしまうことも。だからこそ、子どもを抱きしめ、愛を伝えて」
- ▶サヘル・ローズにインタビュー 血のつながりはなくても愛にあふれる親子のカタチ「生まれ変わったらわたしのおなかから出てき…
- ▶声優・金田朋子。流産を乗り越えて、44歳で長女を出産。私の武器はただ一つ。「できるママ」をあきらめても唯一娘に誇れるもの
- ▶言葉をまったく話さない息子。「ママのことどう思う?」という問いに、「SUKI」とローマ字で感情をつづった忘れられない瞬間【重度自閉症体験談】