新型コロナ「抗原検査」「抗体検査」「PCR検査」それぞれの違いは?
新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、ニュースで耳にする「抗体」検査や「抗原」検査という言葉。現在、世界中で開発が進められているワクチンの報道でも、「抗体」という言葉が登場します。「抗体」や「抗原」は漢字1文字しか違いませんが、全く別物です。これらは私たちの体に備わっている「免疫」の仕組みの中に登場しますが、抗原検査・抗体検査とはどういうもので、一体何を見ているのかについて解説していきます。 【図解】新型コロナ検査で注目の「抗原」「抗体」とは? 免疫の仕組みから知る
●「異物=抗原」とそれを攻撃する「武器=抗体」
そもそも免疫とは何でしょうか? 大まかに言うと、免疫とは「『自分』と『自分以外』の異物を区別し、異物を排除する仕組み」です。そのとき、異物の排除のために免疫システムが使う“武器”が抗体、そして、抗体をはじめとする免疫システムが排除する対象が抗原です。通常は「自分以外の異物」のことを抗原といいますが、外から入ってくる異物(ウイルスや細菌のほか、花粉、寄生虫など)だけではなく、がん細胞のように異常な状態になった自分の細胞も、免疫による攻撃対象になります。
免疫の仕組みを支えるさまざまな種類の細胞たち(免疫細胞=いわゆる白血球のこと)は、協力して異物を見つけてやっつけるという「カラダ防衛隊」です。彼らの複雑な防衛システム(対ウイルスの場合)を図にしてみました(図1)。これでもだいぶ省略しています。この防衛システムの中で「抗体」が登場します。
ウイルスに感染してしまった細胞(感染細胞)からウイルスが出てきて別の細胞に侵入しようとするのを防ぐのが抗体です。基本は「Yの字」をしていて、その二股の先端の形が異物である抗原とピタリと合えばくっつきます。これは「抗原抗体反応」と呼ばれ、ウイルスの感染能力を無効(=中和)にするなどの働きがあります。
●PCR検査=いま体内にウイルスがいるか?
それでは検査の話に移りましょう。抗原検査も抗体検査も、この抗原抗体反応を利用した検査です。では、それぞれ何を見ているのでしょうか? まず抗原検査と抗体検査の2つを比較するために、2020年春の感染拡大初期から使われているPCR検査の特徴を見ていきましょう。この検査で分かるのは「いま体内にウイルスがいるかどうか」です。「PCR」とは、polymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、DNA・RNAなどの遺伝物質における特定の領域を増幅するための化学反応のことです。ターゲットのウイルスにしかない配列だけをPCRで増やすことで、サンプル中にウイルスが存在するかどうかを確認します。 新型コロナウイルス感染症において、PCR検査はウイルスの存在を検知する能力が最も高く、確定診断にも使われます。とはいえ、増幅に必要な最低限の量の遺伝物質が採取できないとウイルスを検出できず、体内のウイルス量が最も多いタイミングの検査でも8割程度の感度(※1)、それ以外のタイミングではさらに感度が下がると推定されています。そのため「陰性=感染していない」とは言えません。 逆に陽性判定の場合は、体操の内村航平選手の報道にあった「偽陽性」のようなケースもゼロではないものの、本当に陽性である確率は非常に高いです。なおPCR検査では、検出されたウイルスが感染力を持つのかどうかまでは分からず、例えば回復後の検査などでは、すでに感染力を失ったウイルスの残骸を検出してしまうこともあります。 (※1)感度…真の陽性を検査で陽性と正しく判定できる割合