「法律が追い付いていない部分がある」伊藤詩織さん会見7月20日(本文2)
ジャーナリストであることは判決に影響したか
小川:フリーの小川です。佃先生か山口先生にお聞きしたいんですけれど、佃先生のお話の中でマスメディアの報道の自由の救済っていうお話があったと思うんですけど、詩織さんは当事者でありつつジャーナリストでもある。その点が高裁の判決に影響したと思うかどうか、影響したとすれば、それをどう思うかっていうのをお聞きしたいと思いました。 佃:それは影響してないと思います。なんて言うんですか。職業とか社会的身分がどうであるかということは、この裁判では特段問題とされていないので、特にそういうことはないと思います。ひとえに裁判所が用いるべき規範を間違えたという問題だと。その間違えた理由は、伊藤さんがジャーナリストという側面を持っているということではなくて、名誉毀損だったら真実性・真実相当性の法理だよねというような、思い込みって言ってはちょっときつい言い方かもしれませんけれども、そういう発想で判断されてしまったということだと思います。 司会:よろしいですか。大丈夫で? はい。ほか、どなたかいらっしゃいますでしょうか。じゃあどうぞ。明珍さん。
立場を利用したハラスメントを根絶するには
毎日新聞:毎日新聞の明珍と申します。伊藤さん、本当にお疲れさまでした。伊藤さんもジャーナリスト、で、メディアで働く女性たちも同じように、取材中に被害に遭うことがあります。先日、長崎市の原爆被爆対策部長から性被害を受けた報道機関に勤める女性記者がその被害を訴えて、15年たった今年5月30日に、その訴訟で被害が認められ、なおかつその被害は元部長からの職権の乱用であったということと、長崎市はその2次被害を防止する義務があったのにそれを怠ったという判決が出まして、先月それが確定しました。メディアで働く私たちについても、取材中の性暴力が職権の乱用で認められたということは大きなことでした。 そして伊藤詩織さんも職業をあっせんするというメールを受けて加害があった。これも相手が立場を利用したものだということで、こうした、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、いろいろありますけれども、自分の立場を利用して相手に性被害を、受ける、暴行するということに対して、どうやったらそれが根絶できるのか、そういった社会、暴力がなくなる社会になるのか、お考えをお聞かせください。 伊藤:ありがとうございます。2017年に被害をお話しして、そのあとに本を書いてから、女性のメディアの集まるグループで初めて、それは公ではなかったんですけど、皆さんにお会いしてお話しする、こうやってお話しする機会があったんですね。そうしたときに40名、50名いたと思うんですけど、1人1人が自己紹介をしてくださったときに、その人その人、1人1人全ての人が、皆さん何かしらの経験があって、そのときが本当に初めて皆さんの#MeTooを聞いたときだったんですよね。 ただ、そのときに、初めてお話ししてくださった中で、これまで自分が、先輩としてそういった被害を聞いたときに、そういった被害の内容はいろいろなものがあると思いますが、そんなの私も受けてたんだからもう目をつむって忘れなさいって言ってたっておっしゃった方がいて、でもそれをすごく後悔してると。それを続けてきたことによって、それがあなたに、詩織さんに起こしてしまったのかもしれない。詩織さんは妹に同じような経験をさせないようにしたいから話したって言ったけれども、私たちは妹のような詩織さんに、それをしてたのかもしれないっておっしゃったんですよね。