なぜエース久保建英は延長戦の末に決勝進出を断たれたスペイン戦後に「涙も出てこない」と語ったのか
またしても鬼門を突破できなかった。これまでに2度挑み、ともに敗れている五輪の準決勝で、快進撃を続けてきた男子サッカーのU-24日本代表が涙を飲んだ。 東京五輪12日目の3日に埼玉スタジアムで行われた準決勝。優勝候補のU-24スペイン代表に試合を支配されながら、キャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)を中心に必死に耐え忍んだ日本だったが、ともに無得点のまま迎えた延長後半10分に、FWマルコ・アセンシオ(レアル・マドリード)に痛恨の決勝ゴールを奪われた。 金メダル獲得の夢を絶たれた日本は、U-24メキシコ代表と対戦する6日の3位決定戦(埼玉スタジアム)で、53年前のメキシコ五輪に並ぶ銅メダルを目指す。7日の決勝(横浜国際総合競技場)はスペインと、五輪連覇を狙うU-24ブラジル代表の顔合わせになった。
「出すことは全部やって負けた」
ベンチの前に座って両ひざを抱えたまま、MF久保建英(レアル・マドリード)は虚ろな視線をピッチへ送っていた。延長戦突入とともにMF三好康児(ロイヤル・アントワープ)と交代。夢の終わりを告げるホイッスルをピッチの外で聞いた。 「何もないですね。出すこと全部やって負けたので、涙も出てこないですし。うん、なんでしょう………まあ次ですね」 試合後のフラッシュインタビューに応じる姿が、ショックの大きさを物語っていた。いつもならばインタビュアーを見つめてそらさない視線が終始、下へ向けられていた。声のトーンも明らかに低い。言葉が途切れた合間には大きく息をついた。 涙も出てこない――は真逆の感情を押し殺すための、精いっぱいの強がりだったのだろう。スペインの印象を問われた久保は、伏し目がちのまま必死に言葉を紡いだ。 「上手かったし、強かったし、自分たちもしっかりとプランを練って臨んだつもりでしたけど、あと一歩及ばなかったかなと思います」 並々ならぬ決意を抱いて臨んだ大一番だった。PK戦の末にU-24ニュージーランド代表を下し、ベスト4進出を決めた7月31日の準々決勝の直後。延長戦を含めて120分間プレーするもゴールに絡めなかった久保は「チームを助けられず、自分自身、迷惑をかけけしまった」と反省の弁を漏らしながら、準決勝での活躍を誓っていた。 「グループリーグが始まるときから、準決勝は普通にいけばスペインだろうなと思っていた。自分のなかで(目の前の試合を)ひとつひとつという話はしていましたけど、自分はここに100パーセントの力で、いや、120パーセント、150パーセントでチームを勝たせたい。どうせあと2試合やるなら、最終日に決勝の舞台で戦いたいので」