突きつけられた問題点…日本は本当に“強豪”スペインと互角に渡り合ったのか…城氏が五輪準決勝の戦いを分析
世界の強豪国のひとつであるスペインを倒し、決勝にコマを進めるまで、あと一歩だった。勝負は90分で決着がつかず、延長戦に突入。後半10分にレアル・マドリードでプレーしているOA枠のアセンシオに左隅に決勝ゴールを決められた。ペナルティエリア内でアセンシオに短いパスを通され、日本のディフェンスは人数的には足りていたが、本来、アセンシオに寄せていかねばならない板倉がボールウォッチャーになりマークを離した。イエローの蓄積で試合に出られなかった冨安に代わり、吉田とのコンビで奮闘していた板倉にとっては、この試合、唯一といっていいほどのミス。集中力が途切れた、その一瞬のスキをスペインは見逃さず、逆に日本は、耐え抜いたカウンターから、ワンチャンスどころか何度も決定機を作ったが、決めきることができなかった。これが世界の強豪国の壁。 「止める」、「蹴る」の基礎中の基礎から応用されているスペインの細かい技術と個の能力の差なのかもしれないが、このちょっとした差が、とてつもなく大きいのだ。 両チームは互角に渡り合っていたように見えて、実は、ハイプレッシャーの中でボールを扱う能力がまったく違っていた。日本はプレッシャーのないところではボールを回せるが、プレッシャーがかかると途端にミスが出る。スペインと同等のレベルでボールをコントロ―ルし前を向いてパスをつなぐことができたのは、中盤では遠藤―田中のボランチの2人くらい。日本がずっと突きつけられている課題が大一番で浮き彫りになった。 ただディフェンス組織は素晴らしく機能した。 必ずボール保持者に対して1枚がプレスをかけ、ボールの出所に制限をかけた。強烈な縦パスを通され、スペインに押し込まれたときもバランスを崩さずに最後の最後でシュートコースを切り、冷静にブロックしたシーンが何度もあった。そのブロックをかいくぐってくる技術がスぺインにはあったが、あの痛恨のゴールまでは集中力を保ち粘り強く耐えた。五輪前のトレーニングマッチでは、スペイン側は、まだ様子見だったが、そのリズムとパスのスピードやタイミングを肌感覚で知った効果はあったように思えた。 前半34分まで1本のシュートも打てずに主導権を明け渡していたが、これも想定内。スペインに攻め疲れが見えた後半には、チーム全体の重心を前がかりにしてセカンドボールを拾い攻撃につなげた。しかし、熱の入った中盤の攻防でも差があった。 やはりスペインが1枚も2枚も上手。各選手のポジショニングが抜群で、日本がプレッシャーをかけても、絶えず3人で、三角形を形成して空いたスペースにパスを通して人を動かす。その洗練された連携の前にマークをはがされ、幾度となくチャンスを作られてしまう。ワンタッチのスピードと正確性。そしてリズム。まだまだ日本のサッカーは、そのレベルに追いついていけなかった。日本は5メートルの距離なら正確にパスを通すことができるが、それが10メートルになるとミスが出る。スペインとは好対照だった。