PK戦で4強進出も残った問題点…なぜNZの「4-1-3-2」システム変更に対応できなかったのか…城氏の五輪分析
苦しい試合をPK戦で勝ち切りメダルが視界に入る4強に進んだことが、何よりの最高の価値。しかし、その試合内容には問題点が残った。シュートを決めるところで決めておかないと「こうなる」という典型的な試合になった。ハッキリ言ってミスによる自滅で日本が120分に及ぶ0-0スコアの苦闘にしてしまったのである。 得点を刻む決定機が少なくとも2度あった。前半10分に遠藤が林の右からのクロスをフリーになって受けたがゴールの外にふかした。これはクロスが速かったため、遠藤のタイミングが遅れたもので、まだ理由はわかるが、後半36分の上田のミスは論外。ペナルティエリア内で勝負した堂安がグラウンダーのクロスをゴールの正面でフリーになっている上田に通したが、キーパーに向かって打って弾かれた。 ニュージーランド(以下NZ)はプレミアで活躍しているOA枠のウッドがエースとして存在していたが、少しプレスをかけるとミスをするなど組織力も個の力も日本より数段下のチーム。快勝できた相手である。前半は「5-3-2」の守備的システムで入ったNZに対して再三にわたってゴールを脅かし、一方のNZのシュートはわずかに2本。おそらく日本は「行けるんじゃないか」「決めようよ。楽になるよ」という軽い気持ちでいたと思う。 だが、後半になってNZがシステムを「4-1-3―2」に変えてくると対応できなくなった。4バックの前にアンカーを置き、中盤を「菱形」に形成され、ディフェンスの間、間を抜かれた。この場合、堂安と久保の2人が、相手をどうマークするかが重要になるのだが、堂安はワイドに開き、久保は前を意識しすぎていたため、スペースを与えることになり、前半とは一転してボールを持てなくなった。遠藤ー田中はハードワークをしていたが、その前のスペースを使われた。ある意味、攻守でパニック状態にあったと言っていい。ボランチのポジショニングやサイドを絞って相手の動きに制限をかけるなどの対策はできたはずだが、ベンチからの具体的な指示も見えなかった。 終始、NZディフェンスは”中”が強固で、日本としてはサイドから揺さぶる必要があったが、そこを切り崩すこともできない。イエロー累積で出場できなかった酒井の穴も響いた。 林、そして後半24分から投入された上田が、NZのディフェンスラインの間に顔を出せないので、堂安ー久保のコンビも予選で見せていたようにワンタッチで縦にボールを運ぶことができない。苦しまぎれに久保、堂安が、強引に個人技で単発シュートを狙わざるを得なくなった。ワントップが起点を作り壁になることができなければ2列目は機能しない。