「成人式」「県外との往来」が引き金? コロナ感染拡大で“宣言”追加要請の沖縄
沖縄県で新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。今年に入って感染ペースが速まり、都道府県別の人口10万人当たりの感染者数でみると全国4位の水準にある(1月26日現在)。昨年夏に、那覇市の繁華街などで感染が拡大したが、今回はそれをも上回るペース。玉城デニー知事は政府に対し、特措法に基づく緊急事態宣言に追加指定するよう政府に要請しているが、そもそもなぜ沖縄県でこれほどまでに感染が拡大しているのだろうか?
感染ペース過去最速 宮古島で急増
沖縄県で初めての新型コロナ感染者が出たのは昨年2月14日。約1年が経ち、1月27日までの累計感染者数は7270人に上る。とりわけ、年始に感染者数が急増した。県が発表する日ごとの感染者数は、これまでピークとされてきた昨年8月をも上回るペースとなっている 。 県内でもとりわけ深刻化しているのは、人口約5万5000人の宮古島市だ。年末からじわじわと感染者が増え、1月17日投開票の市長選挙があった同市では、1月26日に34人の感染が発表され、1日の感染者数として過去最多になった。27日にも33人の感染が確認された。
新型コロナの感染者を受け入れてきた県立宮古病院は、病床や医療従事者の確保が困難になっているとして、1月26日から一般外来診療を休止している。コロナによる入院患者では重症化しやすい高齢者が多く、病院関係者にも感染者が出ている。さらに、島内の高齢者施設ではクラスターも発生。沖縄本島から医療関係者が派遣され対応している。
宮古島だけで直近1週間の人口10万人当たりの感染者数に換算すると100人を超え、全国どの都道府県よりも高い水準にある。宮古島市の座喜味一幸市長は26日の記者会見で「全国一厳しい状況になっている」として、市民や観光客らに対して島との往来自粛などを呼び掛けた。
感染拡大要因 2つの見立て
沖縄県内でなぜ感染が拡大しているのか。県などの分析によると、主たる要因は2つある。年末年始に県内外の人の往来が活発化して接触機会が増えたことと、成人式などに関連する若者の感染だ。 新型コロナの影響で、この年末年始は沖縄を含む全国各地で人の往来は例年より少なかった。とはいえ、県外から沖縄を訪れた観光客や、帰省した地元出身者らといった本土からの移動者は一定数いた。こうした「移入例」を通じた感染が目立ったほか、年末年始に家族や親戚と接触する機会が増加したことで、年明け以降の感染拡大につながっていったというわけだ。 もう1つの要因が、成人式絡みの感染者だ。 「今年はコロナ禍の特別な式典になる。新成人の皆さん、式典前後の宴会は自粛していただき、是非いままでお世話になった家族らとゆっくり過ごしていただきたい」 1月10日に沖縄県内各地で予定された成人式を前に、玉城デニー知事は6日の記者会見でこう呼び掛けた。しかしその注意喚起もむなしく、14日には成人式後に飲み会に参加していた3人の新成人の感染が判明。その後も続々と増え、新成人を迎えた19~20歳の年齢の若者だけで、感染者は100人以上になる。那覇市内では、1月10日の式典参加後に翌朝まで飲み続けた新成人らのクラスターも発生した。20代からの2次感染も目立っている。 感染者が増えれば、当然医療現場はひっ迫する。20代を中心に、感染が家族、高齢者へと急拡大していく現状に対し、県内の医療関係者 は「躊躇(ちゅうちょ)なく強力なハンマー(行動制限)を打つべきだ」と早急な対策の必要性を訴えた。沖縄県は1月19日に独自の緊急事態宣言に踏み切り、22日、特別措置法に基づいた国の緊急事態宣言の対象地域に沖縄県を加えるよう要請した。 この22日には、入院調整に向けて自宅で待機していた陽性患者1人が死亡している。全国的に入院調整中の死亡が相次ぐ中、沖縄県内でもそのケースが初めて確認された。