日銀・黒田総裁会見12月17日(全文2)薄日が差してきたところではないか
物価が上昇して賃金が上がらない場合、対応の余地はあるか
ブルームバーグ:ブルームバーグニュースの藤岡です。先ほどの質問とちょっと重なるところもあるんですけれども、総裁にお伺いしたいのは、まず1つ、来年にかけて、仮に物価がコストプッシュで上がっていって、CPIというのはいろんな要因で動く中で、家計の方の実感とかが物価上昇を嫌悪するとか、消費活動に影響するようなことになって、消費が例えば減少するとか弱まるといったときに、日銀としてなかなか賃金というのは、すぐに上がってこないと思うんですね。ただその中で日銀として何かそういった状況になった場合は対応する余地があるのか、それともやっぱりそこは政府が対応するべきところなのか、まず1点お願いします。 黒田:そこは、大変微妙なところでありまして、例えばご承知のようにアメリカのFRBは物価の安定とともに雇用の極大化ということも目標に入っているわけですね。他方でほとんどの中央銀行、物価の安定っていうのは目標に入っていますけども、雇用の極大化とか、そういうものが入っていないわけです。日本銀行もそういうのは入っていません。 ただ、先ほど来申し上げているように日本銀行法自体が物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということを、その使命としていることから言って、ただただ物価が上がればいいということではなくて、あくまでも賃金・物価が両方上がっていくという中で2%の物価安定目標が実現されるということが非常に好ましいわけですね。ここからは日本銀行の政策委員会としての公式の議論ではないんですけども、2%の物価安定目標が実現されて、そして日本経済の成長率っていうか、労働生産性上昇率が1%強あるとすれば、賃金は3%程度上がっていかないといけないんですよね。
短期金融市場の動きについて教えて
で、それはそういうふうに、物価も上がるし賃金も上がっていって、実質賃金も上がっていくという形で物価の2%の目標が達成されることが望ましいわけで、それに向けて、われわれも努力いたしますけども、やはりなんといっても、政府の今されようとしている賃上げ企業に対する法人税の減税とか、さまざまな形で賃上げを促進しようとされているということは非常に好ましいことだと思っています。 それからまた、ごく、本当に一時的な要因で物価が上がっているときに、すぐに金融を締めるというようなことは好ましくないと思います。やはり金融緩和によって経済活動が活発になり、企業収益も増えて、雇用も増え、雇用が増えるところで賃金も上がっていくわけですから、そういう意味ではわれわれとしてはやはり賃金・物価が、いわば好循環の中で両者が上がっていくという形になるように、金融政策として最大限の努力をすると。他方でもちろん、ご指摘のような政府の政策というものも大変有効だと思いますので、それはしっかりとやっていただくとありがたいというふうに思っています。 ブルームバーグ:すいません、もう1点、短く。今週、レポマーケットのほうで日銀としても対応というんでしょうか、オペをしていますけれども、あらためて総裁の短期金利についてのコントロールというか、短期金融市場の動きについて教えていただけますでしょうか。 黒田:あれは久方ぶりにやったんで、皆さんびっくりしたのかもしれませんけども、レポ金利がちょっと急激に上がったので、それは好ましくないので。上がったといっても別にプラスになったわけじゃないんですけども、マイナスの範囲内でもかなり急激に上がったので、適切でないということで、ああいう措置を取ったということになります。ですから、今のイールドカーブ・コントロールの下で短期金利を-0.1%程度、10年物国債の金利を0%程度ということが政策の要諦ですので、短期金利が上がり過ぎるというようなことが仮にあれば、今後も必要に応じてそういった措置を取るということだと思います。 読売新聞:すいません、幹事社です。所定の時間が来ていますので、あと1、2問でお願いします。 【書き起こし】日銀・黒田総裁会見12月17日 全文3へ続く