サッカー版の新庄監督になれる?!浦和退団の槙野智章が掲げる「監督になって帰ってくる」の野望…移籍オファー待つ武器とは?
強度の高い対人守備の源となるフィジカル能力はまだまだ衰えておらず、さらに16年のプロのキャリアのなかで4バック、3バックの両方でプレーしてきた。 広島時代に師事し、いまも「ミシャ」の愛称で呼ぶミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現北海道コンサドーレ札幌監督)に誘われる形でケルンから期限付き移籍し、その後に完全移籍に切り替えた槙野は、浦和での最初の5年間をこう位置づける。 「ミシャの戦術のもとで輝ける選手、ミシャのピースに合う選手として、ミシャが求めるプレーを最大限発揮してきました」 浦和で実績を残してきた過程で日本代表にも名を連ね、アルベルト・ザッケローニ、ヴァイッド・ハリルホジッチ、西野朗、そしていま現在の森保一と歴代監督に継続的に招集されてきた槙野の思考回路も、ポジティブな変化を遂げてきたという。 「どうすれば日本代表の選手であり続けられるのか、という点にシフトチェンジしながらプレーを選択するようにもなりました。その意味で浦和での前半の5年間、後半の5年間で僕のプレースタイルは変わりましたし、考えることも変わりました。たくさんの監督の指導のもとで、自分にとって方向転換ができた10年間だったと思います」 長期政権を築いたペトロヴィッチ監督が2017シーズン途中で退団してからも、ロドリゲス監督を含めて延べ5人の監督のもとで最終ラインを担ってきた。さまざまな要求に柔軟に対応できるプレースタイルは、新天地がどこになっても、どのような守備形態を敷いているとしても、槙野をスムーズに溶け込ませる武器となる。 広島、ケルン、浦和に次ぐ所属チームで発揮されるのは守備力だけではない。 浦和ではインスタグラムやYouTubeなどのSNSを積極的に駆使。チーム内の結束力を高め、フロントスタッフにも同じベクトルを向かせ、ファン・サポーターや地域との距離を縮めるためのツールとして、時には批判を浴びながらも活用してきた。 監督としていろいろと仕掛ける一環にもなるSNSは、新天地でもさまざまな反響を呼びながら展開されるだろう。そして、ピッチ外の注目度が高まるほど、ピッチ内で結果を残さなければいけないというエネルギーが増し槙野を突き動かしてきた。 他のJリーガーの誰よりも派手に映るようで、その実は地道な努力の積み重ねを絶対に怠らない槙野の素顔は指導者に向いていると言っていい。それでも新天地やセカンドキャリアへ思いを馳せる前に、浦和での残された仕事に全身全霊をかける。 3試合を残したリーグ戦を終えた後には、ベスト4に残っている天皇杯のクライマックスが待つ。そして頂点に立てば、来シーズンのACL出場権を手にできる。 「ACLの舞台で成長する幅はすごく大きい。ACLを経験していない選手や若い選手が多いだけに、レッズはACLに戻らなきゃいけないと思っています」 愛してやまない浦和へ置き土産を残すために、槙野は赤いユニフォームを身にまとって最後の、そして最大の炎を燃やし続けてチームの力になっていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)