無学年授業も導入、勉強は「教わるもの」から「自ら学びとるもの」へ! ~自律学習で先頭を走る横浜創英の挑戦~【前編】
現代は、テクノロジーの進化によって環境が複雑化し、将来予測が困難な状況にあることから「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれています。VUCAとは、Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の頭文字を取ったものです。 このような時代に、学校での学びのあり方にも変化が生じています。ひと昔前の私立中学校・高等学校では「面倒見の良さ」「サービスの良さ」を強調する学校が多かったように思いますが、これらのことではVUCAの時代を生きる子どもたちが、変化に自ら対応しながら成長していく力は身につきません。そこで現在では「自立」「自律」をキーワードに、生徒の主体性を育てる教育の重要性が高まり、カリキュラムを工夫している学校が生まれ始めています。(寺田拓司:東京個別指導学院 進路指導担当)※この記事は2024年7月時点の情報をもとにしています。最新の情報は、学校等にご確認ください。 【グラフ】今の大学入試は「一般選抜」が少数派? 国公立・私立別の割合を見てみる
「与えられる時間割」から「自分で作る時間割」へ
これまでの学校は、クラスごとに時間割が決まった教師主導の一斉教授型の授業がほとんどで、生徒は「何を」「どのように」学ぶかを選ぶことはできませんでした。人口増加の時代、知識を効率的に学ばせ、学力テストにおける得点を上げるという観点では、一定の効果を出したことは事実です。 しかし、VUCAの時代において、生徒が時代の変化に柔軟に対応しながら学び続ける力を育てるためには、生徒が自分で考え、自分で決めていく主体性を育てていくことにも注目しなければなりません。 神奈川県にある私立横浜創英中学・高等学校(以下、横浜創英)は、1940年の開校以来、「『考えて行動のできる人』の育成」を建学の精神に掲げ、学業はもちろんのこと、学校行事や部活動においても、自律した活動ができる生徒の育成を目指している学校です。 建学の精神をさらに推進するために、時間割や学び方を生徒主体に変え、自律心を育てる新カリキュラムを2025年度にスタートしようとしています。 横浜創英が手掛けるカリキュラム改革は、生徒の自己決定を重視し、主体性を育てようとするものです。高校での自由選択科目を大幅に拡大し、生徒一人ひとりがそれぞれの目標に向けて主体的に時間割を作れるようにします。 つまり、「与えられる時間割」から「自分で作る時間割」へとカリキュラムの概念を変えるのです。生徒の学びの態度も「教わるもの」から、自ら学ぶ内容を選び「学び取るもの」へ変換していくことを目指しています。 すでに2024年度において、高校3年生は自分が選択した授業までに登校し、授業が終われば帰宅できるようになりました。各教室にはiPadが置いてあり、生徒はQRコードでタッチして授業の出席の登録をします。その出席の確認は、保護者・担任・教科担任に自動的に連絡が行き渡るようになっています。新しいカリキュラムでは、このシステムを高校を中心に広げていき、生徒一人ひとりが異なる時間割での出席管理を行う予定です。