無学年授業も導入、勉強は「教わるもの」から「自ら学びとるもの」へ! ~自律学習で先頭を走る横浜創英の挑戦~【前編】
自律学習を成功させる3つのポイント
このような学び方を選択する授業で、生徒たちが適切な手段を選択し、自律学習を行うために大切だと私自身が感じた点が3つありますのでご紹介します。 (1)目標設定 (2)メタ認知 (3)適切な手段を選択する力 自律学習を行うための大切なポイント(1)目標設定 横浜創英の目標設定には、「個人目標」と「共通目標」の2つがあります。個人目標とは、生徒個人が自分で設定した目標のことであり、一人ひとり違います。例えば英語でいうと「英検準1級に合格したい」「将来、外国で働いてみたい」といったものです。その教科を学ぶ目的と言ってもいいでしょう。 もう1つは、学校(先生)が設定した目標です。定期テストや単元テストなどで問う、生徒に最低限身につけてほしい力(知識やスキル)で、共通目標として生徒に伝えます。これらの目標を達成するために、「できない」を「できる」に変えていく学びを行うのが自律学習となります。目指すゴールを定めることから自律の一歩が始まるというわけです。 自律学習を行うための大切なポイント(2)メタ認知 目指すゴールが定まった子どもたちは、「自分にできていないことは何だろう、できていることは何だろう」と自分を「メタ認知」します。メタ認知とは、自分自身の認知――例えば、考える・感じる・記憶する・判断する――を第三者的な立場から客観視することです。自分を客観視して、「何を・誰と・どうやって・どこで学ぶのか」を自分で選択する、という流れになります。 自律学習を行うための大切なポイント(3)適切な手段を選択する力 生徒は「先生から学ぶ教室」「友達同士で教え合いながら学ぶ教室」「個で学ぶ教室」「企業から学ぶ教室」の4つから、「こうやって学ぶのが自分の目標達成には適しているんじゃないか」と手段を選びます。見通しを立てて目標設定をし(Anticipation)、実際に学んでみて(Action)、その結果を振り返って(Reflection)、うまくいっていないと判断したら「じゃあ、どうしたらいいだろう」と改めて考えていく。このAARサイクルを回しながら、常に目標と手段の選択を繰り返し、それを振り返り、改善することで自律学習の質を上げていくのです。 適切な手段を選択するときに大切なのが「自己決定感」です。自己決定感とは、アメリカの心理学者エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏による「自己決定理論」で説明されたもので、行動に対する自己決定性の高さが学業成績やパフォーマンス、精神的健康等に影響を及ぼすとしています。特に、自分の行動は自分自身が自発的に行っているものであって、他者から強制されているのではない、と感じることが重要であるとしています。 一般的に自己決定理論では、以下の3つの要素が必要とされています。 (1)選択の感覚……数ある選択肢の中からその行動を選択したのは他ならぬ自分であるという感覚 (2)行動の自己開始……その行動を始めたのは自分であるという事実 (3)個人的責任……自分で選択し、自分で開始した行動の責任は自分で取ること 学びでも、先生に用意されたものを与えられるばかりでは、「教え方が悪い」「使っているテキストが悪い」などと他人や環境のせいにして、努力の放棄につながりかねません。目標や学び方を自分で選択して決定することで、生徒自身が自分のこととして捉えることができ、努力が始まるのではないでしょうか。 自己決定感を醸成するためのサポートとしては、以下の4つがあります。 (1)選択肢の提供……「選択の感覚」を持ってもらうために、選択肢を提供する (2)統制の最小化……選択し、開始したのは自分だと思ってもらうために、コントロールを最小化する (3)共感……選択した理由や選択の事実に対して共感する (4)情報共有……選択理由の獲得や選択結果のチェックなどのために、随時情報を共有する 先生の役割は「教える」ことではなく、「選択を支援する」ことなのです。自己決定に導くサポートを担っているのが、横浜創英の先生たちなのでしょう。