なぜ朝倉未来は”RIZIN大晦日MVP”に「タップしていない」が急転1本勝ちとなった炎上系YouTuberシバターを選んだのか?
奇をてらった“イロモノ”から、実力を伴ったインフルエンサーへ。新しい年の訪れにふさわしい格闘技界の痛快無比なシンデレラストーリーが、わずか6分足らずの間に成就された。 大晦日にさいたまスーパーアリーナで開催された総合格闘技イベント「RIZIN.26」に初参戦した、約111万人の登録者数を誇る炎上系YouTuber、シバター(35、本名・齋藤光)が一夜にして評価を180度覆らせ、今後もRIZINの舞台に立つチャンスを自らの手で手繰り寄せた。 対戦相手が「X」と伏せられたまま迎えた第3試合。ゴング前に上映される煽りVTRで「X」の正体がK-1 WORLD MAXで活躍し、“魔裟斗二世”と呼ばれたHIROYA(28、Try Hard Gym)であることが、1Rがキックボクシング、2RがMMAルールで行われる試合形式と合わせて発表された。 予告していたYouTuber仲間のヒカルとてんちむに、ありしゃん、まりな、さおりんのヘラヘラ三銃士を加え、場内に響く『俺たち金持ちYouTuber』に身を踊らせながら入場してきたシバターは場違い感にあふれ、キックボクシングを主戦場とするHIROYAの前に秒殺される光景すら予感させた。 ボディチェックを忘れてリングへ上がり、雄叫びを上げた後に降ろされる失態でスタンドの笑いを取ったのはしかし、サプライズへの序曲だった。いざ試合が始まるやHIROYAの打撃による衝撃をロープワークで逃しつつ、隙を突いて浴びせ蹴りやソバットなどのプロレス式の技を繰り出す。 打撃でよろめきながら右手で挑発するポーズを見せたかと思えば、ドタバタ感満載のアリシャッフルで笑いを誘う。1Rの終了間際には困惑気味のHIROYAにパンチを浴びせて、ダウンを奪ってみせた。シバターの体重が約18kgも重いとはいえ、まさかの光景にリングへ注がれる視線も変わってくる。 もちろん、戦っている本人は必死だった。キックボクシングルールで行われた1Rに対して「立ち技の選手に、立ち技で勝てるとは思っていませんでした」と打ち明けたシバター本人は、それでも虎穴に入らずんば虎児を得ずの精神を、勇気と知恵を振り絞りながら実践し続けていた。 「距離を潰してひざを一発打って離れて、みたいな対策は一応してきたんですけど。結果的にローキックがめちゃめちゃ強くて懐に入り込めなかったし、パンチがだいぶ効いてフラフラしちゃったんですけど、だからこそ上手くいったというか。パンチを強く振るために(HIROYAが)オープンになってくれたおかげで、ちょっと勝機が生まれたのかな、と。僕のパンチも当たっていましたよね」 こう振り返ったシバターに、ルールが変わった2R2分30秒過ぎに千載一遇のチャンスが訪れる。