なぜ朝倉未来は”RIZIN大晦日MVP”に「タップしていない」が急転1本勝ちとなった炎上系YouTuberシバターを選んだのか?
ロープ際の攻防から捨て身の飛びつき技を繰り出し、さらに両者ともにもつれながら倒れた直後の一瞬の隙を突いて、一撃必殺の腕ひしぎ逆十字固めの体勢に入ったからだ。 まっすぐに伸びたHIROYAの右腕は反り返り、反撃を試みるはずの左手がシバターの足を叩いたように映った。しかし、レフェリーはタップアウトを宣告しない。そのまま続行された試合は3分間を終えて、採点が行われない特別ルールのもとでドローが宣告された。 「タップらしきものがあったから、レフェリーにアピールしたんですけど。まあ、16年間ずっと格闘技をやってきて、プロのリングにも上がって試合をしてきたなかで、飛びつき十字とか引き込んで下から十字をするのが武器だったので、得意技は出せたのかなと思います」 勝利をつかみかけたシーンをさばさばと振り返ったシバターは、次の瞬間、格闘家からYouTuberの表情に戻っていた。控え室でヒカルから「勝てば1000万円、負ければ坊主」と約束していたことを明かしながら、試合後のインタビューでメディアを笑わせることも忘れなかった。 「タップらしき動きがあったときに『1000万円来た』と思ったら、どういうわけか十字が抜けていました。引き分けならいくらなんだろう。ちょっと控え室に戻って交渉してみます」 しかし、HIROYA自身も「タップはしていません。(腕ひしぎ逆十字固めでは)どこが痛くなるんですか? ひじですか? いまもそうですけど僕は肩が痛くて」と振り返っていた状況が、第8試合が終わった直後に大きく変わった。レフェリーや公式記録員がビデオ検証を行った結果、HIROYAのタップ動作が確認され、2R2分38秒でのシバターの一本勝ちが認定された。 「実際に映像を見ると、僕も『タップしたかな』と思えたんですけど。プロモーターとして試合の勝ち負けやジャッジにいっさい口を出さない独立した形を取っていますが、誤審であれば両選手にもファンにも申し訳ないと思いますので、再発を起こさないためにも競技陣としっかり考察していきたい」 榊原信行CEOは異例の判定変更を今後への反省点としてあげながら、戦前の予想を覆す白星をあげたシバターを「ある種のイノベーションだと思います」と称賛した。 「シバター選手のここまでのキャリアでは、実力的には格闘家としてRIZINに上がれなかったのかなと。しかし、もっとイロモノ的な試合になるのかなと思いながら本物の格闘家と真摯に戦った姿を見て、実験的なものではありますけど、格闘技に心得のある炎上系YouTuberとのコラボを、世界的なトレンドにアジャストするというか、上手く取り入れて2021年の企画を進めていきたい」