紀平梨花のB級国際試合チャレンジ杯出場と逆転Vの意義とは?
フィギュアスケートのチャレンジ・カップ(オランダ・ハーグ)で、ショートプログラム(SP)で2位発進となった紀平梨花(16、関大KFSC)がフリーではトリプルアクセルを成功させて141.90点をマークし、合計208.34点で逆転優勝、3月20日から、さいたまスーパーアリーナで行われる世界選手権へ向けての前哨戦を最高の形で終えた。 シニア初挑戦となった今季はこれで国際大会6勝目。しかも、そのうち4勝が逆転勝利となった。 今回はSPで冒頭のトリプルアクセルが2回転半になり、途中、回転不足やスピンが氷上の穴に足をとられバランスを崩すなどして今季SP最低の66.44に終わりトップとの差は3.81点差あった。だが、フリーでは冒頭のトリプルアクセルを着氷させ、2本目のトリプルアクセルは回避したものの他をよせつけなかった。後半のコンビネーションジャンプで回転不足を取られ、スピンではレベルをとりこぼしたが、減点につながる大きなミスはなく演技をまとめた。 なぜ紀平はこうも立て続けに逆転優勝できるのか。 そして四大陸選手権に続き、負傷した左手薬指が完治していない状況で、国際B級試合のチャレンジ・カップへ出場した意図はどこにあったのか。 元全日本2位で現在福岡で後進を指導している中庭健介氏は、こんな見方をしている。 「逆転が可能な理由としてトリプルアクセルがあるからだという意見が多いです。実際、トリプルアクセル一発でショートプログラムのミスを帳消しにできる最強の武器であることは確かです。紀平さんのショートでのミスはトリプルアクセルがシングルアクセルとなるケースが多いのですが、他の選手はダブルアクセルですから2点強くらいの差しかつきません。フリーでトリプルアクセルを成功した場合は、ダブルアクセルとの差が4点強くらいなので一発でハンデは消えます。 でも紀平さんの逆転の背景にあるのは、それだけではありません。他のジャンプに安定感があり、スピン、スケーティング技術も含めてトリプルアクセル以外が進化していることが理由にあります。表現力にも磨きがかかっています。シニア1年目の選手は、最初は演技構成点でなかなか評価されにくい傾向にありますが、ジャッジの信頼を1試合、1試合勝ち取り、演技構成点も含めて力があるんです」