紀平梨花のB級国際試合チャレンジ杯出場と逆転Vの意義とは?
基礎点が8.00あるトリプルアクセルは強烈な武器だ。 今回のフリーでは、冒頭の一発だけで、2つ目のトリプルアクセルは回避したが、このトリプルアクセルでGOEを含めて8.64点をゲットした。他選手はプログラム上入れなければならないアクセルジャンプがダブルアクセル止まりで、こちらの基礎点は3.30しかないので単純に基礎点だけで4.70点縮めることができる。GOEを含めると5点差は射程圏内なのだ。 実際、今季の4試合の逆転差を調べてみると、最大がNHK杯の6.58点差。先の四大陸選手権でも5.06点差をひっくり返している。また3回転+3回転のコンビネーションジャンプでも、紀平の3回転ルッツ+3回転トゥーループの基礎点が10.10点もあり、今回の出場選手の中で最も難度の高いものをきっちりと成功させている。 中庭氏が指摘する通りトリプルアクセルだけが優れて逆転劇が生まれているわけではない。 そしてそもそも今大会出場の狙いは何だったのか。 実は、国際B級試合に位置づけられている今回のオランダでのチャレンジ・カップへの参加理由は、すべて3月の世界選手権に勝つための布石だったというのだ。 中庭氏が紀平が今大会に出場した理由を解説する。 「今回の大会に出場した理由としてポイントを加算して世界ランキングを上げることと、新しいシューズを慣らすことの2つがあったのではないでしょうか。なぜ世界ランキングを上げることが必要なのか。基本、試合での滑走順は、抽選によって決まりますが、羽生選手のようなレベルの高い選手が最初に演技して、その後のジャッジの採点が難しくなることを避けるために世界ランキングによって大きく分類してから抽選を行っています。ただ世界ランキングは過去3年間のポイントによって決められます。ジュニア時代のポイントも加算されますが、ジュニアはシニアよりも世界大会で獲得できるポイントが低く設定されているため、世界ランキングがまだ高くありません。少しでもランキングを上げておき、世界選手権での滑走順を決める抽選で不利にならないように、今回の大会に出場したのが狙いの一つでしょう」