震災ボランティアから「ヨソモノ・ワカモノ」議員へ――新市議たちが見つめる石巻の未来 #知り続ける
もちろん、当選はひとつのスタートに過ぎない。議員として何をなすかはこれからだ。ただ、3人の当選がある種の光になったことも間違いない。今回の選挙で初めて一票を投じたという20代の女性の声が印象的だ。 「人口は減り、同級生も半分は街を出て、言葉にできない窮屈さがありました。でも今回の選挙で、この街には新しい風を受け入れる寛容さがあったんだと知ることができました」 石巻市議会では6月16日から新人議員にとって初めての定例会が開会、27日には一般質問が始まった。一般質問は行政に対して事務の執行状況や方針を問い、疑問をぶつけ、政策提案を行う議員たちの晴れ舞台だ。原田は排水路の雨水対策や避難ビルの掲示板など地域の災害対策について問い、都甲は出産・子育てをテーマに質問。谷が問うたのは行政と市民の協働と、教育について。 それぞれが選挙戦で訴えてきたテーマでもある。 襟元に光る議員バッジは重量わずか数グラム。そこに市民の期待と重責が宿る。石巻に根を張った3人のヨソモノは、街に何をもたらすか。被災11年。最大被災地と言われた石巻はいま、新たな歩みを始めている。
--- 川口穣(かわぐち みのり) ノンフィクションライター。1987年、北海道札幌市生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてウズベキスタン共和国に派遣、同国滞在中の2011年にライター活動を開始。山岳雑誌編集者を経て、現在は雑誌・ウェブなどで取材・執筆。著書に『防災アプリ特務機関NERV』(平凡社)。宮城県石巻市の災害公営住宅向け情報紙『石巻復興きずな新聞』副編集長も務める。