カメラ売れない時代 赤城耕一さんに聞く写真と人々の「いま」
SNSで誰もが発信者となれる時代。ネットには毎日数え切れない映像が躍る。動画はもちろんだが写真には写真のインパクトがある。しかしこれほど写真が日常にあふれるいま、皮肉なことにカメラ業界はスマホに押され苦戦中だ。一方ではクラシックな発表手段ともいえる展示が人気だったり、紙媒体の写真雑誌が創刊されるなど写真を取り囲む状況はいささか混沌として見える。写真は、カメラは、どこへ向かうのか。テクノロジーの進歩とともに時代に寄り添いながら発展してきた写真とカメラの「いま」を、写真家でカメラメカニズムライターとしても知られる赤城耕一さんにオンライン取材で聞いた。 【写真特集】正方形に切り撮った写真家・赤城耕一さん「録々」
生き残るアナログ感 ニコンZ fc、雑誌「写真」
「いまはスマホがありますからカメラはある意味、不要なものになったんです。スマホを携帯しているのに、もう一つ別にカメラを持つのは面倒ですよね。ではこういう時代にカメラにどう説得力を持たせるのか。皆さん『カメラを買う理由』を探しています。最近ヘリテージデザインのニコンZ fcがウケた例もありますが性能だけじゃなくモノとしての美しさ、楽しさ、操作など存在感を欲する人も多いからでしょう」 Z fcは老舗メーカーのニコンが2021年7月に発売したレンズ交換式のミラーレスカメラで、80年代のフィルム一眼レフ、ニコンFM2の面影を感じるデザインが早くからSNSでも注目を集め同社久々のヒット作となった。売れるカメラのヒントがありそうだ。 「同じようにクラシックなデザインを施したデジタルカメラは以前にもありましたが、それはあまり売れませんでした。Z fcの場合は女性がバッグに携帯できるサイズ感だったり、若年層に伝える広告の工夫がありました。ただ、次機種があるのかどうか先行きは楽観できませんからカメラにとっては依然として厳しい状況であることに変わりはありません。ネットを見ていると確かに写真を撮る人は多いのですが」 クラシックといえば今年に入って紙媒体の写真雑誌が創刊し赤城さんもメカニズム記事で携わっている。誌名も「写真」(ふげん社)。昨年からSNSで創刊の情報を発信しており写真愛好家の間では期待が高まっている。年2回刊で編集人村上仁一さんのもと統括アドバイザーに飯沢耕太郎さん、エディトリアルディレクターに若手写真評論家の打林俊さんを迎え、毎号テーマを変えて日本の写真文化を発信するという。 「『アサヒカメラ』、『日本カメラ』などの老舗雑誌がこの2年の間に次々と休刊してしまいましたが、元日本カメラのスタッフが新しく写真雑誌を立ち上げました。しかも紙媒体に絞る展開という。閉塞していた写真の業界でも風穴が開くかもしれません」 手触り、質感、同誌にもマテリアルとしての存在感や所有感がある。どんなに時代が進んでもアナログのぬくもりを欲する場面はなくならないということか。