カメラ売れない時代 赤城耕一さんに聞く写真と人々の「いま」
展示が静かなブーム SNS活用して告知
また、赤城さんは写真家の戸澤裕司さんと「赤城戸澤写真道場」としてオンラインのワークショップをコロナ禍となった2020年7月から主宰している。この時代にカメラを買って写真を撮る人たちの熱量をじかに感じている。 「(コロナ禍で)私も仕事的にはダメージを受けていますが、写真で救われている部分もあるかもしれません。自分一人でできる趣味でもあるし、コロナ禍になって撮り始めた人もいます。写真には記録的な意味もありますから、今マスクを着けている人がたくさんいる景色なんかは10年経って見返したら『どんな時代だったんだろう』ってなりますよね。常に時代と寄り添うのは写真の役目の一つだと思いますし、記録に残すのは必要なことではないでしょうか」 そしてこのSNS時代、写真を撮る人たちの間ではいま展示が静かなブームだ。喫茶店の壁面から出品に審査を要する大規模なメーカーのギャラリーまで態様はさまざまだが、SNSには頻繁に展示の告知が見られる。グループ展や個展を通し、きちんとプリントした写真を発表する機会を大事にする人が増えてきた感がある。 「私は写真は全部スマホで撮ってもいいとさえ思うんですが、SNS投稿だけではつまらない。写真の発表の仕方として写真展や写真集を作るのはいいことだとも思っています。楽しみ方って多様性があっていいと思うんです」
SNSも展示も根幹に「見せたい」「共有したい」気持ち
展示ブームを支えるのは「撮った写真を見せたい」という気持ちで、それはSNSで写真を発信するのと根本的には変わらないという。 「SNSでも『いいね!』の数がすべてじゃないけど、ウケたいわけでしょう。方法論はいろいろあっても共通するのはみんな写真を見せたいということだと思うんです。中には自分だけ楽しめればいいやっていう人もいるでしょうけど、SNSなどでは価値観を共有したがっている人が目立ちます。写真は言葉が通じなくても共鳴できることがある。SNSにのせれば世界中の人が見て、日本の和菓子の味はわからなくても写真に美しいと感じる人もいるかもしれませんよね」 一方で、写真のあり方として誰にも見せない写真もあるという。 「ヴィヴィアン・マイヤーというアメリカのアマチュア写真家は、亡くなってから写真が見出されていまや有名写真家です。それはレアケースにしても、世の中には人に見せるための写真じゃない、っていう写真がいっぱいあるわけです。それこそ家のアルバムも含めて。そこにはもしかしたら大傑作とか芸術的に優れたものがあるかもしれません。それも含め写真の簡便さと奥の深さ、価値観の多様性があるんじゃないかなと思います」 SNSには毎日写真があふれ返るが、それはある面で写真の魅力を物語っている。 「写真っていうのは他の人が同じシーンを見たのに、あなたはどう解釈したか、それを見るのが楽しいですね。ワークショップでも同じ時間、同じ日、同じ天候のとき参加者の皆さんと一緒に街を歩いて、やっぱり撮るものが違ったり、角度や物の見方って人によってすごい違うなってあらためてこちらが勉強になるんです」