篠山紀信、大いに語る【前編:昭和~平成】三島由紀夫から女性目線の最新作まで
平成もあと数ヵ月、篠山紀信のもとを訪れた。写真家として昭和から、「時代が生んだ面白い人や面白いこと、モノなどを、一番いい場所で一番いいタイミングで撮ることが僕の仕事。何を撮るかは時代が決めてくれる」との姿勢で活動を続けている。いまあらためて、篠山が写真家として生きた時代を振り返った。
平成最後のヌードは女性から見ても美しい
最近、篠山は『premiere』(プルミエール=フランス語で“はじめて”の意)とタイトルを冠した4冊の写真集を発表した。元キャンパスクイーンの3人の女性たち(結城モエ、高尾美有、松井りな)が「ぜひ撮ってほしい」と、篠山にオファーしてきたそうだ。4冊のうち3冊はそれぞれのソロで昨年12月に同時発売、1冊が3人で写っている特別版で今年1月に発売。これが篠山にとって平成最後の写真集になるという。 「最近はヌードが載った雑誌は飛行機に置かない、コンビニで売らない。そういう時代にこそ女性が見ても素敵だと言われる本を作ってみたい、と。そこに彼女たちが、いまの年齢なりの確固たる作品を作りたいと僕を指名してきたんです」 その思いを汲んだ篠山は、新しいチームで撮影に臨んだ。女性から見て美しい作品を具現化するため、ヘアメイク、スタイリスト、デザイナーなど、ファッション中心に活躍の実績のあるアーティストを集めたのだ。
これまでとは異なるチームで臨んだ新境地
「モデルの彼女たちが、『これが私たちの作品』と、喜んで胸を張れるものを作ってあげたいな、と。従来の僕の作り方では、どうしても男性読者向けに男から女性を見たときの目線がメインになっちゃう。そこで今回は男目線で作っていた人は全部やめて、ファッションを中心にやっている人たち、それも海外での経験がある人を集めました。ふだんパリやニューヨークで仕事していて、たまたま日本に帰ってきているとか。女性誌の目線で発想したり作ったりしている人たちでチームを組んだんです」 その結果、出来上がった写真集は大判でもなく、キャッチーなコピーが躍る帯などもなく、洋書コーナーにそっと置かれたハードカバーのような品の良いたたずまい。日本語が一つもなく左開きで、篠山の写真集にしては珍しく余白をとって写真がレイアウトされている。 「僕にとってもまったく新しい経験というか、面白い経験になりました」