なぜ立浪竜はオリ山本の攻略に成功したのか…古巣に恩返しの決勝打を放った三ツ俣に授けられていた秘策とは?
三ツ俣にとってオリックスは約3年と数か月在籍した古巣だ。2010年に修徳高からドラフト2位でオリックスに指名された。当時の岡田彰布監督が1位指名のクジで、大石達也、伊志嶺翔大、山田哲人と3連敗して、後藤駿太を指名したが、「1位のクジは3敗したけど、2位でポテンシャルのある三ツ俣を取れたのが良かった」と、振り返った“二刀流”の逸材だった。だが、2014年のシーズン途中にトレード期限ギリギリで中日の同じく内野手の岩崎恭平と1対1トレードされた。 2017年入団の山本とは重なっていないが、古巣への最高の恩返しになっただろう。 三ツ俣が1軍昇格したのは5月5日。本来のショートのレギュラーである京田が、打撃不振に加えて守備でも凡ミスを繰り返し、立浪監督に「戦う顔をしていない」と2軍落ちを命じられ横浜から名古屋へ強制送還となった日に、急遽、1軍に呼ばれ、4打数2安打でいきなり結果は出したが継続できなかった。 チームの打撃不振に伴い、打撃優先の布陣を組むことになり、立浪監督はショートに不慣れな高橋周を三塁からコンバートした。その際、「高橋周か、根尾か」の議論はあったが、三ツ俣の名前は出てこなかった。 だが、前日、27日に石川が足を痛めて4回でベンチに退くと高橋周が三塁に戻り、三ツ俣がショートで起用され、タイムリー二塁打を放つなど攻守において活躍しチームの勝利に貢献していた。 中日でコーチを務めたことのある評論家の高代延博氏は、「今年の中日は、戦う姿勢がガラっと変わった。後から出ていく選手の準備ができているのが、その典型。代走にしろ、途中交代にしろ、選手がベンチから出ていくスピードが素早いのだ。勝利へ向けての意思統一がなされている証拠。だから控えの選手がチャンスをもらった際に結果を出せる」と評価していた。 三ツ俣は、去年、今年と、自ら電話をかけてタイプ的に理想とする広島の菊池の自主トレに志願参加した。なんとかしたいと必死にもがく努力と、立浪監督が変革させているチームの風土が、山本を攻略した背景にある。 抑えから先発へ転向してプロ5年目にして初めて綺麗なマウンドに上がった鈴木が5回4安打無失点の好投を演じて山本にプレッシャーをかけたことも見逃せない。抑え時代の剛球イメージから一転、150キロを超えるツーシームと独特にボールが滑るカットボールのコンビネーションでボールを動かして打たせて取るピッチングで凡打の山を築いた。ストレートよりもツーシームの方が速く、しかもホームベース盤を広く使って低めに動かしてくるので、オリックス打線も的を絞れず戸惑っていた。 勝たせたいとの親心と豊富なブルペン陣があるため、立浪監督は、わずか68球で、勝利投手の権利を持ったまま鈴木を降板させた。結果、勝利は鈴木にはつかなかったが、彼もまた山本攻略の立役者の一人であり、中日の先発陣に頼もしい新戦力が加わったことは間違いない。 スポーツ各紙の報道によれば、丁寧で真摯な試合後の対応に定評のある立浪監督は、「今日は、誰もが(両先発が)山本、鈴木ということでオリックス有利と思っていたと思うんですが、なんとか自分はどんな形でも勝ちたいと思っていた。それが現実になって非常にうれしい」と、素直な心境を明かしたという。 7連敗の後に3連勝。今日の先発は2枚看板の1人の柳。立浪竜が交流戦の主役になるのかもしれない。 (文責・論スポ、スポーツタイム通信社)