なぜ立浪竜はオリ山本の攻略に成功したのか…古巣に恩返しの決勝打を放った三ツ俣に授けられていた秘策とは?
「後ろにつなぐことだけを考えて打席に立った結果、いい結果になったんでよかったです。(フォークか、ストレートかの狙いに)腹をくくった結果がいい結果になった」 敵地のヒーローインタビューに指名されたのは、もちろん三ツ俣。プロ12年目にして初の“お立ち台”となったが、落ち着き笑顔で語った。 ファウルで粘りに粘った9球の勝負。 「いやあ(バットにボールが)当たったのが奇跡だと思います」 三ツ俣は、そう謙遜したが、その背景にチームが徹底していた山本攻略があった。 「日本を代表する投手なので粘り強く、ひつこく、チームとしてやっていこうということだった」(三ツ俣) 布石があった。 岡林の三塁打、大島の一、二塁間を破るタイムリーで、先取点を奪った3回に、さらに一死一塁と続くチャンスに、三ツ俣は執拗にバントの構えからヒッティングに転じるバスターを仕掛け、最後はショートゴロで走者を二塁へ進めた。バスターでボールをよく見ることで、山本の球筋が、三ツ俣の脳裏にインプットされていたのかもしれない。 決勝タイムリーのお膳立てに中日ベンチが仕掛けた心理戦があった。この回、一死から、ここまで2打席連続でバットを折られていた桂が、山本の足元を狙うセカンドへの内野安打で出塁。立浪監督は、俊足の高松を代走に送った。3回に右中間を破る三塁打を打たれ、先取点の足がかりを作られた9番の岡林を打席に迎え、代走の高松が全身から「走るぞ」オーラを漂わせると、山本の様子が明らかに変わる。 初球は、ストライクゾーンを大きく外れ、そこから牽制を2球。さらに2球目もボールになると、一塁の頓宮がマウンドに行く。“走者を気にしないで”とでもアドバイスしたのか。3球目もボール。抜群の制球力を誇る山本が、カウント3-0として球数は、100球を超えた。ストレートでひとつストライクを取ったが、伏見は、走者を気にする山本との間が合わず、思わず右手を上げてプレートを外させた。 フルカウントになって、高松の自動スタートを少しでも遅らせようと、また山本は牽制を2つ。結局、岡林を歩かせ、得点圏に走者を進めてしまうことになったのだ。立浪監督の仕掛けが、ジワジワと沢村賞男のリズムを狂わせたのかもしれない。 試合後、山本は、「先制点を許してしまったところや同点に追いついてもらった直後に失点してしまったところなど投球においての大事な部分ができていなかったと思います」と悔やんだ。 結果的にボテボテの内野ゴロで同点にはされてしまったが、0-1で迎えた7回一死三塁のピンチに“8回の男”ロドリゲスを投入した立浪監督の執念の采配が、8回の同点劇への流れを作ったとも言える。