もういつ噴火が起こっても全然不思議ではない――研究の第一人者に聞く、「富士山リスク」への向き合い方 #災害に備える
―― 火山灰による経済的被害は相当なものになるのではないでしょうか。 「ちゃんと算定されていないんですよ。2004年ごろ、けっこうエイヤーッと試算して出した額が2兆5000億円だったかな? そういう数字はあるにはあるけれど、本気で算定したら、もっとすごい額になると思います」 ―― 火山灰は雪と違って解けないので、影響も長引きますよね。そして、長引けば長引くほど、経済的な被害も大きくなっていく。 「そう、解けない。だからさまざまなインフラが完全復活するまでには、それこそどのくらいの時間がかかるか見当もつかない。そういうことまで考えたら、それはもう、ものすごい被害になってしまうから、そこまでやっていないんですよね。何十兆円とかになるだろうけれど、対策をするといっても対策の仕方もなかなかない」 ―― そもそも首都圏に人口がこれだけ集中しているということ自体がリスクになっていますね。 「けっこう大きな爆発的な噴火は、最近でも南米などで起こっていますが、人がそれほど多くいるところではないので、公共交通機関が被害を受けるようなことはほとんどない。しかし、日本の場合には、都市が周辺部にある。小さな噴火であれば大丈夫ですが、300年前と同じようなことが起こると、100キロ離れていても十分に被害をもたらすことになります」 ―― 今後、われわれは富士山噴火にどう備えていけばよいのかを考えたときに、地域によってそれぞれ違うということがよくわかりました。そして、富士山噴火への備えはまだまだできていないと感じました。 「誰も経験したことがないので、確かにどのようなことが起こるのかを想像することは難しいです。しかし、ハザードマップを確認するなどして、自分が普段生活している場所にどのような現象が起こるのかを理解しておくことが大切です。また、計画に基づいて訓練を行い、問題点が見つかれば、また新たに計画を作り替える。こうしたことを繰り返し、最適解を求めていくことが、富士山という火山と一緒に生きる術だと思います」