もういつ噴火が起こっても全然不思議ではない――研究の第一人者に聞く、「富士山リスク」への向き合い方 #災害に備える
広域停電、断水、物資不足……首都機能停止も
――交通以外のインフラはどうなりますか。たとえば電力はどうでしょうか。 「電線の上に火山灰が積もると、乾いた火山灰ならいいのですが、それが湿ってしまうと電気を通す。そうすると停電を起こしてしまう。それから今の首都圏の電力って、湾岸地域の火力発電所で賄っているわけです。火力発電所っていうのは、飛行機のエンジンと同じで、空気を吸い込む必要がある。そこにゴミが入らないように巨大なフィルターがあるのですが、火山灰を一緒に吸い込むと、そのフィルターはすぐに詰まってしまう。詰まると発電できなくなるから、そのフィルターを取り換えない限り、どんどん発電能力は落ちる。ただ、取り換えようといっても、巨大なフィルターなので、足場を組んで、ということが必要。そんなことをしているうちに、広域停電が起こります」 ―― 水道などへの影響も心配ですね。 「富士吉田市だと全部井戸水と湧水だからほとんど影響はないのですが、神奈川県はほとんどが川から取っています。そこに火山灰が降ると、火山灰に吸着しているフッ素や塩素などの影響で、水質の基準を満たさなくなる可能性があります。もっとひどい状況になると、火山灰が積もっているところに雨が降ることで降灰後の土石流が発生し、取水口を塞いでしまって断水がずっと続くということも起こり得ます。次々と被害の様相が変わっていくので、いろんなことを考えなくてはいけないですね」 ―― 影響が短時間で済めばいいですが、長期間続くと大変なことになりますね。 「たとえば地震が起こったら、すぐに自衛隊が給水車を出して、翌日には水が届けられる。ところが、火山灰が積もっていると、交通インフラが麻痺しているから、給水車もすぐには来られない。コンビニもあっという間に物がなくなってしまって、補給もきかなくなる。自前で水や食料を持っていないと生き延びられない。そういう意味でも、やっぱり個人のレベルとして、水を1週間分ぐらいは備蓄しておくことが重要です。これは首都圏で地震が起こったときの備えとほとんど同じですが、しっかりとやっておかないと命が危なくなる」 ―― 都市部は物流頼みの生活をしているので、その物流が止まると食べ物にも飲み物にもすぐに困ってしまうでしょうね。 「コロナのときのトイレットペーパーの問題なんかと同じです。物流がストップしたらあっという間に物がなくなってしまう。誰かが買い占めたとか、そういうことではなくても。昔の日本だったら、問屋さんが倉庫にいっぱい在庫を持っていたりしたので、それなりに何とかなったでしょうが、今はそうではないですから」