もういつ噴火が起こっても全然不思議ではない――研究の第一人者に聞く、「富士山リスク」への向き合い方 #災害に備える
火山灰が降れば、交通インフラは非常に早い段階で駄目になる
ハザードマップの見直しに際して、「富士山の最大規模の噴火による溶岩噴出量は、今まで考えていた倍の規模になることがあり得る」とわかった。最終的には神奈川県の相模原や小田原にまで到達する。そういった再検討を受けて、今回、周辺自治体の避難計画が公開される運びになった。 ――どうしても気になってしまうのが、前回の宝永噴火と同様の噴火が起きたときの首都圏への火山灰の影響です。藤井さんは、中央防災会議の降灰対策について検討するワーキンググループでも主査を務めていましたが、いったいどんなことが起きるのでしょうか。 「一番の被害は、やっぱり交通インフラです。噴火してまずすぐに航空路が使えなくなる。それから灰が降り始めるのが、たぶん噴火が始まってから、近いところだと30分、ちょっと離れたところだと1時間ぐらいですが、次に止まるのが鉄道です。わずか0.5ミリ火山灰が積もっただけでもう鉄道を止めざるを得ない。0.5ミリって道路だと白線が見えるか見えないかぐらいの状態です。たとえば東京の人たちが、『あ、火山灰が降り始めた。家に帰らなくては』などと考えて駅に向かっても、みんな帰宅困難者になってしまうでしょう」 ―― その段階では車はまだ使える? 「0.5ミリであれば車は走れますよ。走れはするけれども、火山灰が降っている間はたぶん光が遮断されるので、暗闇になってしまう。江戸時代の宝永噴火のとき、新井白石が火山灰が降り始めたら、自分の手も見えないぐらいで、本を読もうにも家の中で昼間なのに行灯をつけなければ読めないといったことを書き残しています。ライトで照らしても、火山灰が降っているので、先が見えない。視程が猛烈に悪くなるので、車は走るにしても、のろのろと走るしかない。あっという間に渋滞が起きますね。噴火がさらに続くと、そのうち車も動けなくなってしまう。山に近いほど、火山灰の積もる量は増えていく。10センチを超えると普通の車はとても走れない。このように交通インフラは非常に早い段階で駄目になります」