大事なのはSNSより現実社会ですから──プロボクサー那須川天心が語る「世間の声」との向き合い方 #今つらいあなたへ
いつも前向きで、「関係ないっしょ気持ちっしょ」の精神で。“神童”那須川天心(26)のマインドはどこまでも真っすぐだ。キックからボクシングに転向して「パンチ力がない」などとの声すらも己のパワーに変換して、7月の試合ではアンチファンをも唸らせる豪快な3回TKO勝利を収めている。パリ・オリンピックでも問題となったアスリートへの誹謗中傷。SNS社会において那須川らしい「世間の声」との向き合い方とは──。(取材・文:二宮寿朗/撮影:近藤俊哉/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
リング上からファンに語りかけたわけ
那須川天心に、なぜ人々は引きつけられるのか。 ボクシングの試合会場に子どもも含めた若いファンがあふれる。単に強いから、魅せるからだけでは説明がつかない。ぼんやりとしたそんな疑問の答えがリング上でのマイクシーンにあった。 7月20日、東京・両国国技館──。ボクシング転向4戦目の舞台に立った帝拳ボクシングジム所属の那須川はWBA世界バンタム級4位ジョナサン・ロドリゲス(アメリカ)と対戦し、3回1分49秒TKO勝ちを収めた。スピーディーかつ的確にコンビネーションを浴びせ、最後は渾身の左ストレートを見舞ってロープまで吹っ飛ばしてのフィニッシュだった。倒し切っての勝利はボクシングに転向して初めて。マイクを向けられると集まったファンに対して最後このように語りかけた。 <みなさんも何かしら戦っていると思うんです。毎日、誰にも見えないところで、できるところまでやる。それが本当に大事だと思います。僕も日々一生懸命にやっています。だから次、お互い強くなってまたここに応援に来てくれたらうれしいと思います> それは日々同じように戦っている人々に送るエールにも聞こえた。愛される理由が何となく胸にストンと落ちた。