使用済み太陽光パネルの回収・リサイクル義務化の動き。負担は所有者? それともメーカー?
行政指導も限界に来た
もちろん、国は何もしなかったわけではなかった。経済産業省と環境省は、業者に補助金を出し、分離・リサイクルの技術開発を進めてきたが、技術力を持つ業者は全国に1万ある産業廃棄物の中間処理業者のまだ一握りにすぎない。それでも、パネルの重さの半分以上になるガラスは不純物が多いため、建材用の断熱材や道路の路盤材など、用途が限られている。 環境省は適正処理とリサイクルを進めるために業者向けのガイドラインを作成した。自治体も条例で適正処理等を求めたが、いずれも行政指導の限界があった。
リサイクルに取り組む業者のデータでも回収量の6分の1が埋め立てに
ところで2022年に環境省が中間処理業者のうち回答のあった41社のデータをまとめたものによると、廃棄物の3割を不良品と災害が占めた。回収した2割はリユース、残りの8割が中間処理に回った。うち5割がリサイクルされたという。ガラスの分離・回収が多く、2304トン(パネル11万5000枚)のうち、1828トン(9.3万トン)が中間処理に回り、1247トン(6万4000枚)がリサイクルされた。またリサイクルに回らない単純破砕が101トン(5000枚)、熱回収(焼却のこと)が480トン(2万4000枚)。最終処分が402トンだった。 これは、リサイクルできる業者に限った数字なので、実際のリサイクル率はもっと低いと思われる。そこで経産省と環境省はこのままでは、まもなく使用済みの太陽光パネルが数十万トンレベルに達し、最終処分場が逼迫し、不法投棄の懸念が高まると考えた。 それを防ぐには法律で太陽光パネルの回収とリサイクルをメーカーまたは所有者に義務づけるしかない。そして円滑に行うためには分離・リサイクル技術を開発し、リサイクルできる体制を整えることが必要だ。 9月から両省の審議会の小委員会の合同会議はそのための法制度の在り方を検討する。環境省の官僚は「回収・リサイクルのための法制化の必要性はかなり前からわかっていた。しかし、経産省との調整がつかず遅れた。EUは10年以上前から法律で義務づけされており、立ち後れていた。 しかし、大量廃棄問題が目の前に迫り、先延ばしができなくなった。家電リサイクル法では、使用済み家電の購入者がリサイクル券を購入し、リサイクル費用に充てられている。太陽光パネルも、リサイクルの費用を負担するかが大きな議論になるだろう」と語る。参考になるのがEUだ。