使用済み太陽光パネルの回収・リサイクル義務化の動き。負担は所有者? それともメーカー?
EUは10年以上前にリサイクルを義務づけ
EUは、2012年8月にEU指令によって各国による仕組みの整備を求めた。これは欧州運輸・通信・エネルギー理事会の大臣会議で、電子機器などの廃棄物発生量を抑制するため太陽光パネルのリサイクルを義務づけることを決めた。加盟国ごとに国内法を整備している。これを受け、2014年1月にイギリス、2015年10月にはドイツが法制化し、さらにオランダ、ブルガリア、ルクセンブルクなどが続いた。 ドイツでは、パネルが40枚未満の住宅用では、自治体に設置された回収ポイントへの輸送は所有者が行い、その後の処理はPV CYCLEという団体が行う。40枚以上の住宅用と非住宅用のパネルは、解体と撤去までは所有者が行い、輸送以降の処理はPV CYCLEが処理業者に委託する。その費用はPV CYCLEの会員企業(製造業者等)の会費からあてる。 ドイツのPV CYCLEは、欧州太陽光発電協会(EPIA)、ドイツソーラー産業協会(BSW)、太陽電池モジュールメーカー6社が2007年に太陽光パネルの自主的な回収・リサイクル・適正処分を目的に設立した非営利団体。PV CYCLEに、欧州を市場とする太陽光パネルのメーカーの90%以上が加盟している。ドイツでは、太陽光パネルの生産者が第三者機関に処理を委託することができる。
EU司法裁判所の明確な判断
こうした動きに、日本の経産省は指針づくりに動いた。これがガイドラインの策定につながるが、EUと違い、事業者の自主的な取り組みを重視し、回収・リサイクルの義務づけの動きに結びつかず、立ち後れることになる。 廃棄物処理法を所管する環境省は、最終処分場の延命化と有害物質の汚染防止、不法投棄防止の観点から、法制化を視野に入れていたが、経産省の同意取り付けが難しく、実態調査や課題摘出にとどまっていた。 ところでEUも問題がすべて解決したわけではなかった。2012年のEU指令に対する各国の対応には濃淡があった。チェコで太陽光の発電施設を運営するVW社が、EU指令で生産者が払うとされている処理費用を払わされているのはおかしいと異議を唱え、国を訴えた。 チェコ地方裁判所は、VW社の主張を全面的に認めたが、環境省がチェコ最高裁判所に上訴した。最高裁は2012年のEU指令の解釈と有効性について、EU法裁判所に予備判決を求めていた。その判決が2022年1月に出た。裁判所は2005年8月から2012年8月までに市場に出回っていた非住宅用の太陽光パネルについて、生産者に回収義務はないとし、EU法を部分的に違法とした。 そして2012年8月以降に市場に出た太陽光パネルの廃棄処理は非住宅用も住宅用も生産者の負担とし、2018年以降EU市場に出た電気・電子機器について、生産者は廃棄物の管理・処理の責任を負うとした。これに基づきEU委員会は、2024年3月、2012年の廃電気電子機器指令を一部改正する指令を出し、2025年10月までに加盟国の国内法に反映するよう求めた。 参考:東京環境経営研究所 EU/WEEE指令改正の考察 (https://www.tkk-lab.jp/post/reachrhos20240426) ちなみにリサイクルの義務づけは、EU諸国にとどまらず、アメリカでは州ごとに義務づけが行われ、韓国は2023年から回収・リサイクルのための負担金制度が施行され、日本は待ったなしの状況になっている。