使用済み太陽光パネルの回収・リサイクル義務化の動き。負担は所有者? それともメーカー?
日本は待ったなしの状況に
司法裁判所の判決が出た頃、日本の環境省は、建設リサイクル法を改正し、太陽光パネルを回収義務づけの品目に追加し、解体業者などに再資源化をさせられないかと検討を始めた。裁判の結果に触発されたのかもしれない。 しかし、国土交通省が同法の主務官庁。結局、国交省が抵抗したのか、この構想はさたやみとなる。「何度か制度のありかたを検討してきたが、先送りが続いていた」と関係者は語る。10kWh以上の発電事業者に適正処分させるため、経産省は2022年、再生可能エネルギー特別措置法を改正し、設置者に処分費用の積み立てを義務づけた。 資源エネルギー庁の2019年の調査で、太陽光パネルの廃棄費用を積み立てている発電事業者が16%しかなかったことがわかったからだ。放置すれば不法投棄や不適正処理が増えるに違いなかった。 さらに、経産省は、2022年4月、環境省と合同で、太陽光パネルの抱える問題と解決方法を整理する検討会を設置し、翌年5月に提言書をまとめた。ただ、ここでは開発許可など網羅的な論点が整理されており、使用済みパネルの法制化には言及していない。今回の合同会議は使用済み太陽光パネルの回収・リサイクルの在り方をメーンにすえて、仕組みと法制化を提案することになる。すでに両省の間では来年春の時期通常国会に提案することで合意しているようだ。
費用負担は誰が行うのか
環境省によると、「回収・リサイクルを義務付けることで、最終処分場の受け入れ容量の圧迫を緩和させると同時に、資源循環を進めることができる」という。9月に始まった合同会議では、義務付けの対象範囲や、リサイクルの費用を誰が負担するのかといったことが審議される。リサイクルしなかったり、使用済みの太陽光パネルを放置したりした場合の発電事業者の罰則も検討する。 ピークとなる50~80万トンは家電リサイクル法の家電4品目の約50万トンを凌駕し、リサイクルの体制づくりは急務だ。既存のリサイクルに関する法律は自動車や家電、小型家電を対象とし、車は所有者が車の購入時にリサイクル料金を支払い、自動車メーカーはフロン、エアバッグを引き取り、リサイクルする。エアコンやテレビなどの家電は、所有者が廃棄時にリサイクル券を購入し、リサイクル費用を負担する。 太陽光パネルの場合、ドイツでは生産者が大半の費用を払う仕組みになっているが、日本の家電リサイクル法の仕組みにならうと、生産者はパネルの販売価格にリサイクル費用を含めず、廃棄時に所有者に支払わせることになるため、生産者責任が弱いとの批判がかねがねある。 一方で、生産者に費用負担を求めるにしても、日本で普及する太陽光パネルの多くは中国製。生産者責任を明確化するためには、海外のメーカーのただ乗りを許さないことが必要となりそうだ。 参考:環境省 太陽光発電設備の廃棄・リサイクルをめぐる状況 及び論点について (https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000252102.pdf) 参考:環境省 再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状 及び課題について (https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000183808.pdf)