「古川飛行士にバトンつなげたい」若田宇宙飛行士が会見7月21日(全文3完)
JAXA理事の経験は宇宙飛行にどう生かせるか
井上:フリーランスの井上です。すいません、2問目の質問です。若田さん、2018年から2020年までJAXAの理事を務めてらっしゃったと思うんですけれども、この理事としてのご経験で、何か宇宙飛行に生かせると考えていらっしゃることがありましたら教えてください。 若田:ありがとうございます。そうですね、やはり有人宇宙技術部門長と、それから理事という仕事をさせていただいて、やはりそのときに世界各国の国際宇宙ステーション計画の幹部の方とお話しさせていただく機会がありましたし、いろんな技術的な、それからある意味では政策的な調整に近いことをたくさんさせて、参加させていただきました。 そういった、国際宇宙ステーション計画がここまで成功裏に進んできた中で、いかに各国との連携をきちんと保つことが必要か、それが宇宙飛行の現場から、例えば国際宇宙ステーションのプログラムマネージャーであったり、それ以外の幹部のさまざまなレイヤーで、いかに緊密な連絡、連携を取っていくことが必要かっていったことを、例えば2018年からの仕事の中でも勉強させていただきましたので、そういった経験を踏まえて、常にあまり一点にフォーカスするんではなくて、こういったトラブルが発生したときに、それを解決するためにどういう視点で考えたらいいか、それからチームのどこを頼って、誰を頼ってコミュニケーションをしていったらいいかみたいなものっていうのは、さまざまなポジションの経験をさせていただいたことが今、役に立ってるのかなっていうふうに思います。
宇宙に行ってないときのほうが苦労している
今のご質問、いい仕事で、宇宙飛行士ですと宇宙に行くときの仕事だけしかクローズアップされないと思いますけども、私、宇宙に行ってないときのほうが苦労してると思います。宇宙に行く前とか宇宙に行って帰ってきたときにさまざまな、やはり仲間の支援ですとか、運用を支援する通信、管制局の仕事ですとか、さまざまなマネジメントの仕事をNASAでもさせていただきましたし、JAXAの中でもさせていただきました。 やはり中間管理職の皆さんって結構苦労してるんだなっていうのがよく分かりましたし、JAXAの有人宇宙技術部門っていうところの中に有人宇宙技術センターっていうところがありますけども、そこのマネージャーをさせていただいたときっていうのは、やはり「きぼう」を安定的に支えていくために、どんなに開発っていう仕事が難しいことなのか。それから今は、今度は「きぼう」だけではなくて、Gatewayという新しい月周回拠点に向けたさまざまな開発をしてますけども、人間が安全に滞在してさまざまな成果を出すためのハードウエア・ソフトウエアの開発というのはいかに難しいのかと、そういったことをマネジメントの経験を通して勉強させてもらいましたので、そういった観点で、宇宙飛行士として開発チーム全体のためにできることが何かっていったことが、より明確に理解できたのかなというふうに思います。 ですから、宇宙に行かないときに仕事をさせてもらったことっていうのが私の糧になってるなというふうに思いますので、その大切な時間を過ごさせていただいた皆さんの顔がよく浮かんできますけども、そういった経験を生かして、今回のミッションでも全力を尽くしたいなというふうに思っています。 井上:ありがとうございます。 若田:ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。それでは、ほかのご質問のある方、いかがでしょうか。もう少し時間も取れるかなと思っておりますが、もう1、2問。では、どうぞ。