平塚市における認知症初期集中支援の実践と課題―内門大丈先生インタビュー【前編】
高齢化に伴って増加している認知症はその病気の特性もあり、適切な医療機関や介護サービスにつながることが難しいといわれています。各自治体で実施されている認知症初期集中支援事業は、認知症の症状で困っている40歳以上の在宅生活者に対して、適切な支援を提供する取り組みです。メモリーケアクリニック湘南の内門大丈院長は、神奈川県平塚市から認知症初期集中支援事業を受託し、多くの患者さんをサポートし続けています。取り組みの成果やこれからの課題、目指すべき姿について、お話しいただきます。(全2記事の1) ※本記事は、日本慢性期医療協会との連載企画「慢性期ドットコム」(https://manseiki.com/)によるものです。
◇外来診療への誘導と訪問診療・在宅診療を両立
認知症初期集中支援事業は、何らかの理由で医療や介護につながることができていない認知症の人たち、あるいはつながっていたとしても中断してしまっている人たちに対して、適切な医療・介護サービスを受けられるようにサポートする取り組みです。 認知症初期集中支援チームは各自治体に設置されていますが、自治体によって配置場所が異なるのが現状です。地域包括支援センターに設置されている自治体が60%以上ともっとも多く、医療機関(疾患医療センター以外)に設置されている自治体は約11%、認知症疾患医療センターに設置されている自治体はさらに少なく6%程度です。 平塚市の認知症初期集中支援チームは、私が院長を務めるメモリーケアクリニック湘南に設置されています。当院は連携型の認知症疾患医療センターであり、さらに在宅療養支援診療所として常に患者さんとつながれるシステムが構築されています。このような認知症初期集中支援チームは、現時点では全国でも極めて少ない部類であると思われます。初期集中支援は通常、チームのスタッフが対象者宅に訪問して外来受診を促すことが基本です。当院は外来診療を行いつつ訪問診療・在宅診療の提供もしていますので、外来受診の誘導はもちろん、受診が難しい人に対しても適切にアウトリーチ(対象者がいる場所に出向いて支援すること)ができています。