平塚市における認知症初期集中支援の実践と課題―内門大丈先生インタビュー【前編】
◇認知症ならではの支援の難しさ
平塚市では2024年4月現在、13の地域包括支援センター(平塚市での呼称:高齢者よろず相談センター)が相談窓口となり、認知症初期集中支援チームと連携して対象者への支援を行っています。 地域包括支援センターと認知症初期集中支援チームは月に1回、支援する対象者を選定するための会議を開催しています。各センターに寄せられた相談から候補者の情報が提供され、支援チームが具体的にどのように介入すべきかを議論しながら対象者を選定します。 初期集中支援チームによるサポートは約6か月を目安に集中して行い、交通整理をするように、適切な医療や介護につないでいきます。6か月後には「病院への通院が決まった」「かかりつけ医にきちんと通院できるようになった」「介護保険を申請し、デイサービスに通えるようになった」などを目指します。しかしながら認知症は、個人差はあるものの10年くらいかけて徐々に進行していくため、それがゴールではありません。数年たてば認知症がさらに進行し、患者さん本人の病識がなくなり治療の必要性を感じられなくなる、認認介護・老老介護により家族も病識が薄くなる、ということが起こり得ます。3~4年たって再び交通整理が必要になった事例もあり、医療や介護を継続して受けることが非常に難しいのが現実です。 解決策の1つとして過去に「金銭面での問題がある対象者に無償で医療を提供できないか」という話がありました。しかしこれは認知症のことをまったく理解できていない意見です。たとえば、体に何かできものがあったならば、その切除を無償で対応してよいかもしれません。ただそれが可能なのは、医療が切除のみで完結するからなのです。認知症は10年かけて続き、医療・介護は完結しません。もし3か月分の医療費を無料にできたとしてもその後の9年7か月はどうするのかという壁にぶつかってしまいます。 このように認知症初期支援は一度道を作って完了とするのではなく、「その先のサポートをどう続けるべきか」まで含めて考えて支援することが必要だと考えています。