〈目撃〉木の上で交尾するクマの初の報告、さらに衝撃的な行動も、南米のメガネグマ
樹上に適応したクマ
国際自然保護連合(IUCN)が危急種(vulnerable)に指定しているメガネグマは、南米の山岳地帯原産で、生息場所の環境や高度はさまざまだが、彼らが最もくつろいだ姿を見せるのは木の上だ。 「後ろ脚の筋肉が前脚よりわずかに大きいのは、樹上生活への適応です」と、英チェスター動物園の保護科学者でボリビアを拠点に活動するヒメナ・ベレズ・リエンド氏は言う。 このほか、樹上生活の特徴としては、木登りがしやすい鋭く曲がった爪や、林冠に大きな足場を作る能力などがあり、クマはそうした足場を睡眠と安全確保のために利用する。 ベレズ・リエンド氏によると、クマは「樹上の足場まで獲物を運び上げる」こともあり、そこでさまざまな動物の骨が見つかることも珍しくないという。 ベレズ・リエンド氏のチームは、樹上での求愛行動の音声を録音したことはあったが、樹上での交尾を確認した者はこれまで一人もいないという。
子グマを食べる共食いまで
ピルコ氏は当初、予備的な研究のために、2頭の若い個体に、ナショナル ジオグラフィックが開発した小型カメラ「クリッターカム」を首輪を使って装着した。すると、どちらのクマからも新たな知見が次々と得られた。 ある動画では、クリスが土か粘土のようなものを食べていた。「土食」と呼ばれるこの行動は、これまでにヒグマ(Ursus arctos)で確認されており、おそらくは下痢を予防するためだと考えられている。しかし、メガネグマでこうした行動が見られた例はなかった。 カメラの映像にはまた、首輪をしたクリスがハイイロウーリーモンキー(Lagothrix cana)を食べている様子が映っていた。おそらくは地上で見つけたサルを樹上に運び上げたものと見られる。 クリスがこのサルを殺したのか、それとも単に死骸を手に入れただけなのかはわからない。だが、こうした行動がメガネグマで記録されるのは初めてだ。また、どの種であれ、クマがヒト以外の霊長類を食べた2例目となる。 最後に、映像データにはもう一つ驚きがあった。 「最も衝撃を受けたのは、クマが何かを食べている動画を再生していたときでした」とピルコ氏は言う。何が映っているのかよくわからなかったため、科学者らは動画をもう一度再生した。「そのとき、それが実はクマの赤ちゃんだと気づいたのです」 サルの例と同じく、この場合もオスのおとなが赤ちゃんを殺したのか、それとも偶然死骸を見つけたのかは不明だが、これはメガネグマにおいて初めて確認された子殺しのケースかもしれない。 一部の動物では、オスが同種の赤ん坊を殺して母親の発情を促すことがある。首輪をしたクリスが赤ん坊を食べるのが目撃されたのは交尾行動のちょうど1カ月前であり、子殺しの理由はそこにあった可能性もある。