”内田篤人ロス”の鹿島アントラーズがFC東京に逆転勝利したワケ…「彼が残した言葉を裏切ることはできない」
敵地・味の素スタジアムのピッチ上でプレーする選手のなかにも。ベンチで出番を待っているリザーブ陣のなかにも。そして、ベンチを外れ、スタンドで戦況を見守っている選手たちのなかにも。鹿島アントラーズの精神的支柱を担ってきた、内田篤人さんの姿をもう見ることはできない。 今月末限りでの引退を電撃的に発表し、日本サッカー界を驚かせた内田さんが、ガンバ大阪との現役ラストゲームを終えてから3日。気持ちも新たに臨む初めての一戦でレジェンドが残した言葉が力強く脈打ち、FC東京から2-1の逆転勝利をもぎ取る執念をアントラーズにたぎらせた。 本来なら11月3日に行われる予定が、FC東京が出場しているAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が集中開催される日程と重複した関係で26日に前倒しされた明治安田生命J1リーグ第26節。両チームともに無得点で推移した均衡は、前半アディショナルタイムに破られた。 右サイドに抜け出したFC東京のMF三田啓貴からパスを受けた19歳の右サイドバック、中村拓海がペナルティーエリア内へ侵入する。対峙したMF三竿健斗の股間を通し、ゴール前へ送ったパスをカットしようと、同じく19歳のDF関川郁万がとっさに左足を伸ばした次の瞬間だった。 つま先のあたりに当たってコースを変えたボールが、アントラーズゴールに吸い込まれてしまう。まさかのオウンゴールで、リーグ戦で4試合連続となる先制点を献上した。これまでの3試合を振り返ればヴィッセル神戸と引き分け、横浜FCに苦杯をなめさせられ、まだ記憶に新しいガンバとは内田さんが放った現役最後のクロスを起点にして、土壇場で追いつく奇跡を起こした。 勝ててはいない。ただ、試合終了のホイッスルが鳴り終わるまで、黒星の二文字を何がなんでも拒絶する常勝軍団のDNAを、右ひざの痛みをこらえながら逆サイドを狙った内田さんのクロスが体現していた。そして、引退セレモニーの余韻が残るなかで、内田さんはこんな言葉を残していた。 「新しく変わろうとしている鹿島ですけど、負けていいわけじゃない。やっぱり勝ち点3を取らなきゃいけないチームですが、少し時間がかかるのはしょうがない。ただ、今日のサッカーを観てもらえればだいぶ押し込んでいたし、上手くコントロールしながらやれるということを示せたと思う」