”内田篤人ロス”の鹿島アントラーズがFC東京に逆転勝利したワケ…「彼が残した言葉を裏切ることはできない」
今シーズンから指揮を執るザーゴ監督のもとでボールポゼッションを高め、攻守の切り替えも早めて主導権を握り続けるスタイルに挑んでいる。新しい戦い方が、馴染んできているとは言い難い。それでも、サッカーにおける原則的な部分、球際における粘り強さやセカンドボールの攻防で後手を踏む理由にはならない。メンバーを変えずに臨んだ後半。アントラーズが雄叫びをあげた。 開始わずか3分。中央でパスを受けたMFファン・アラーノが、ゴール前へ浮き球の縦パスを送る。DF渡辺剛の死角を突くように、斜めへ走り込んできたFWエヴェラウドがヘディングを一閃。キーパー林彰洋に一度は防がれたこぼれ球を、あきらめることなく右足でねじ込んだ。 9分後にはリーグ戦で初先発を射止めていた、高卒ルーキーのMF荒木遼太郎(東福岡)が魅せる。敵陣のやや右サイド寄りでパスを受けて前を向き、一瞬のタメを作ってからゴール前へ走り込んできたアラーノへ絶妙のスルーパス。11試合目で決まったアラーノの来日初ゴールをアシストした。 「まず顔を上げたときにパスとシュートの選択肢が頭に浮かんで、最初は(土居)聖真君が見えたんですけど、ちょっと厳しいかなと思ったらアラーノがいいタイミングで走り込んできました。ただ、手前に高萩選手がいて(パスコースと)かぶっていたので、ちょっと溜めながらパスを出しました」 ほんの数秒の間に、18歳とは思えないほどの落ち着きぶりと視野の広さをフル稼働させた荒木は、キックオフ前にキャプテンのMF三竿健斗からある言葉をかけられていたと明かす。 「健斗君からは『ミスをしてもオレが取り返す。お前のよさをどんどん出していけ』と言ってもらいました。監督にも『思い切りやってこい』と言われていたので、特に緊張することもありませんでした。自分が点を決める、という強い気持ちで臨んでいることで、アシストになるような部分が増えてきたので、これからも自分の持ち味を出しながら、ゴールへの意欲をどんどん出していきたい」 ヴィッセル戦で同点に追いつくリーグ戦初ゴールを、ガンバ戦ではDF犬飼智也の同点ゴールのアシストを、ともに後半アディショナルタイムにマーク。実績を自信に変え、成長を続ける荒木がFC東京戦で決めたアシストの場面を巻き戻してくと、三竿が鋭い縦パスを預けていることがわかる。